金田一少年の事件簿の事件の一つ「ファイル4 学園七不思議殺人事件」のネタバレ解説記事です。
以降はネタバレを含みますのでご留意ください。
ネタバレ解説
被害者の人数:3人(10年前の事件を含む)
怪人名 :放課後の魔術師
ストーリー :★★★
犯行トリック:★★
動機の同情度:★
管理人満足度:★★★
金田一の通う不動高校では古い木造旧校舎を取り壊して新しい鉄筋の校舎を建てる計画が予定されている。
しかし「放課後の魔術師」を名乗る人物から古い校舎を取り壊したら七つの呪いが降りかかるという内容の脅迫状が学校に送られてくる。
その脅迫状がきっかけとなり旧校舎に伝わる七つの怪談の噂が学校内で復活する。
七つの怪談すべてを知ったものは「放課後の魔術師」に殺されると言われており生徒たちの間で恐れられている。
そんな中、ミステリー研究会の会長である桜樹るい子は不動高校の創立祭の会報のテーマとして、七つの怪談に関する噂の真相を調べあげ、さらには学校に脅迫状を送り付けた「放課後の魔術師」の招待を究明することを題材にする。
金田一の頭の良さを知っていたるい子は金田一をミステリー研究会に勧誘する。
そこに美雪も加わり放課後の魔術師についての調査が始まるのであった。
登場人物
本事件の登場人物です。
・金田一 一(17歳)
高校2年生。
名探偵金田一耕助の孫で普段は落第すれすれだが実はIQ180の天才。
桜樹るい子に誘われてミステリー研究会の題材である「放課後の魔術師」の調査に乗り出すことになる。
今回初登場する佐木竜太は後にビデオ係として活躍する「佐木竜二」の兄である。
・七瀬 美雪(17歳)
高校2年生
金田一の幼馴染で優等生。
事件に遭遇した時は金田一の助手としてサポートする。
桜樹るい子の色香に誘われてミス研に参加する金田一を心配してついていくことになる。
なお今回は真壁のポスターをはがそうとしたため的場に鈍器で殴られて重傷を負う。
※真壁のポスターの裏には的場が10年前に殺害した青山ちひろの白骨死体があったため。
・佐木 竜太
不動高校1年生。ミステリー研究会の会員。
後に金田一のビデオ係として活躍する「佐木竜二」の兄。
・的場 勇一郎
事件の犯人
元高畑製薬の研究員。
30年前、不動高校があった場所に高畑製薬の研究所が存在していた。
その研究所では新薬の開発が行われており、人体実験を行うために6人の人間が雇われていた。
しかし実験は失敗に終わり被験者の6人は全員死亡してしまう。
このアクシデントに焦った的場を含む研究員たちは何とか事実を隠そうとする。
そこで彼らは建設中だった新しい研究所(現在の不動高校の旧校舎)の周辺や建物の中に6人の遺体を隠すことにする。
土台のコンクリートや壁の中に死体を塗り込むことで死体を隠蔽したのである。
そして高畑製薬は罪から逃れるために研究所を移転し、不動高校に死体を隠した研究所を寄付したのであった。
※学校なら簡単に校舎を壊さないであろうという計算があった。
更に高畑製薬は人体実験を受けた被験者失踪の噂をうやむやにするために、戦時中スパイ容疑で軍に逮捕された神保博士を利用する。
6人の失踪事件は第2次世界大戦中に神保博士が起こしたものだと周囲に言いふらしたのだ。
また何らかの拍子に死体が出てくるのを恐れた研究員たちは見張り役として的場を学校に派遣する。
更に死体が発見されないように6人の死体を隠した場所を学校の六不思議として怪談話をでっち上げて人が近づかないように情報操作を行った。
怪談話が功を奏して死体は発見されることがなかったが今から10年前に推理小説部(現在のミス研)に所属する青山ちひろが六不思議の調査に乗り出す。
青山ちひろは調査の結果、的場たちの罪を明らかにする。
ちひろは警察に全てを言おうとするも的場ともみ合いになり旧校舎の階段から転落して死亡してしまう。
的場は青山ちひろの死体を旧校舎の壁の中に隠し、その場所に人が近づかないように怪談話を新たにでっち上げて、不動高校の七不思議としたのであった。
うまくすればこのまま死体は発見されないはずであったが不動高校が旧校舎の取り壊しを予定したことで的場は焦る。
旧校舎が取り壊されると7人の死体が露見してしまうからだ。
的場は学校に旧校舎を取り壊すなという脅迫状を送り付けて取り壊しをやめさせようとする。
しかし今度は脅迫状に興味を持った桜樹るい子が放課後の魔術師の正体を暴こうとしてしまう。
さらにタイミングの悪いことに地震が起きたため旧校舎に隠した青山ちひろの白骨死体が壁から露出してしまい、桜樹るい子に白骨死体を見られてしまう。
焦った的場はるい子を口封じのために殺害する。
また的場は地震で露出したちひろの死体を隠すために壁の上にポスターをはってごまかすが、尾ノ上がそのポスターをはがそうとしたため殺害。
※また美雪もポスターをはがそうとしたため襲われているが一命はとりとめている。
自らの保身のため罪を重ねる的場であったが最後は金田一に全ての罪を暴かれる。
そしてその場にいた青山ちひろ父親である立花良造に持っていたナイフで刺されて死亡する。
・桜樹 るい子
事件の第1の被害者
不動高校3年生。ミステリー研究会の会長。
学校に脅迫状を送り付けた「放課後の魔術師」の正体を解明しようとする。
旧校舎で調べ物をしていたところ地震が発生し、10年前に的場が殺害した「青山ちひろ」の白骨死体を目撃してしまったことで、的場に口封じで殺害される。
・真壁 誠
不動高校3年生。ミステリー研究会の会員。
推理小説で大賞を受賞した。
※しかし実際に小説を書いていたのは同じミス研の鷹島友代であった。
真壁は的場のミスリードに引っ掛かり生物室の密室トリックをワイヤーを使って外から鍵をかけたものだと推理した。
※実際は鏡を使って金田一たちに別の部屋を見せて犯行現場を勘違いさせるトリックであった。
なお準レギュラーキャラのような形でこの事件の後もしぶとく登場する。
※金田一37歳の事件簿では刑事として再登場している。
・鷹島 友代
不動高校2年生。ミステリー研究会の会員。
極度の潔癖症で手術用の薄いゴム手袋を普段から使用している。
真壁が大賞に輝いた推理小説を書いたのは鷹島友代が書いたものである。
・尾ノ上 貴裕
事件の第2の被害者。
不動高校2年生。ミステリー研究会の会員。
推理大賞を受賞した真壁が尾ノ上をことあるごとに煽るので真壁に憎しみを抱いている。
※尾ノ上の作品は予選も通らなかった。
ミス研の部室に貼られている真壁が大賞に輝いた時のポスターをはがそうとしたため的場に殺害される。
※ポスターの裏には的場が殺害した青山ちひろの白骨死体があったため。
・立花 良造
不動高校の警備員。
10年前に亡くなった青山ちひろの父親。
当時青山ちひろは失踪したとされていたが単身赴任中だった立花良造は娘が失踪する等あり得ないと考えて、不動高校に警備員として潜入していた。
金田一の推理で娘のちひろを殺したのが的場だと明らかになった時に持っていたナイフで的場を刺殺した。
・青山ちひろ
10年前の不動高校の生徒。
当時、推理小説部(現在のミス研)に所属しており学校の七不思議について調査を行っていた。
的場がかつての高畑製薬の研究員で人体実験で被験者6人を死なせたことを突き止める。
ちひろは的場にそのことを伝えた上で、警察に全てを暴露しようとするが的場と口論になった上にもみ合いになり階段から転落死してしまう。
・剣持警部
言わずと知れた剣持警部。
不動高校で起きた事件を担当することになる。
・神保博士
的場の話では第2次世界大戦中に異常者として処刑された人物とされている。
しかし本来は良識のある人物で化学兵器の発明を命じられたのを拒否したためスパイ容疑で逮捕されていただけであった。
的場たち高畑製薬の研究員は自分達の新薬に関する人体実験で被験者を死なせてしまった事件を隠蔽するために、神保博士を異常者に仕立て上げて失踪事件は神保博士によるものだと噂を流していたのであった。
事件との直接の関連性はなし。
事件の内容
一連の事件の犯人は不動高校に勤務する教師の的場勇一郎。
30年前に高畑製薬に研究員として働いていた的場。
その頃ちょうど高畑製薬では新薬の開発が行われており、6人を使って人体実験を行っていた。
しかし人体実験はうまくいかず6人全員が死亡してしまう。
あせった研究員たちは6人の死体を新たに建設中の研究所の土台や壁に塗り込み死体を隠すことにする。
出来上がった研究所は不動高校に寄付をし研究員たちは逃げるようにその場所から離れていった。
しかし何かの拍子に死体が発見されるのを恐れた研究員たちは見張り役として的場を教師にして不動高校に派遣する。
的場は死体が発見されないように死体を隠した場所で怪談話をでっちあげて人が近づかないように六不思議を作り上げる。
怪談話のおかげもあって、死体は発見されずに時は流れていく。
しかし今から10年前に青山ちひろという生徒が六不思議に興味を持ち、調査を開始する。
その結果ちひろは的場がかつての高畑製薬の研究員であることと6人の死体が不動高校の旧校舎に隠されていることを突き止める。
ちひろは的場にそのことを話し、警察に全てを暴露しようとするが的場と口論の上、もみ合いになり旧校舎の階段から転落死してしまう。
焦った的場は旧校舎の壁にちひろの死体を隠し、更にその場所に怪談話をでっち上げて不動高校の七不思議を作りあげたのであった。
それから現代に時間は流れて旧校舎の取り壊しの話が持ち上がる。
旧校舎が取り壊されれば7人の死体が見つかってしまうことを恐れた的場は放課後の魔術師の名をかたり学校に脅迫状を送り付けて旧校舎の取り壊しをやめさせようとする。
しかし放課後の魔術師に興味を持ったるい子が放課後の魔術師の正体を暴こうとする。
更にタイミングの悪いことに地震が起こり、老朽化した旧校舎の壁が壊れてしまいちひろの白骨死体がるい子に見つかってしまう。
過去の罪が明らかになってしまうことを恐れた的場はるい子を口封じに殺害する。
そして同様の理由で白骨死体を見られそうになったため尾ノ上をも殺害したのであった。
メイントリック
本作のメイントリックは鏡を利用したトリックです。
的場は鏡を廊下の途中に斜めの向きで置くことで別の部屋を金田一たちに見せて犯行現場を勘違いさせるトリックを使いました。
犯人の的場について
金田一史上動機が最低の犯人。
金田一に登場する犯人は基本的に犯行動機に同情すべき理由があることが多いです。
※主に復讐系。
しかし本事件の的場は犯行動機が自己保身以外に何もなく動機の面に関して金田一史上最低の犯人と言えます。
金田一に謎を解かれた後も自らの犯行を人の責任にしたりとなかなかに小物っぷりを発揮してくれた犯人でした。
管理人コメント
管理人は子供の頃にこの話を読みましたが魔術師のお面がトラウマレベルになる怖さでした。
初期の金田一は本当に不気味な感じで描かれていて、「オペラ座の怪人」「雪夜叉」「放課後の魔術師」は管理人にとってトップレベルの怖さでした。