【小説】灰色の北壁|ネタバレ感想

小説

真保裕一氏の短編小説「灰色の北壁」のネタバレ感想記事です。

短編なのでさらっといきます。

あらすじ
世界のクライマーから「ホワイト・タワー」と呼ばれ、恐れられた山がある。死と背中合わせの北陸を、たった一人で制覇した天才クライマー。その偉業に疑問を投じる、一編のノンフィクションに封印された真実とは…。表題作の他に「黒部の羆」「雪の慰霊碑」を収録。新田次郎文学賞を受賞した山岳ミステリー集。
「BOOK」データベースより

ネタバレ

ここからネタバレしてきますので未読の方はご留意ください。

黒部の羆

・矢上(二代目黒部の羆)
主人公。山で遭難した若者2名の救助に向かう。
25年前に初代「黒部の羆」である樋沼に助けられた過去がある。

・樋沼(初代黒部の羆)
25年前に山で遭難した矢上と瀬戸口を助けた。

・瀬戸口
25年前に矢上と山に登り遭難したところを樋沼に助けられた。

叙述トリックの話です。

本編は2つの視点から書かれています。

A:山に遭難した若者2人の救助に向かう「黒部の羆」の視点

B:山で遭難して救助隊の助けを瀬戸口とともに待つ「矢上」の視点

Aパートでは黒部の羆の名前が明かされておらず読者にはAとBは同じ時系列だと誤認させられます。

つまり「黒部の羆」が矢上と瀬戸口を助けにいく話だと思わされます。

しかし実際は時系列には25年の差があります。

A:2代目「黒部の羆」矢上の視点

B:25年前に初代「黒部の羆」樋沼に救助された矢上の視点

つまりどちらも矢上の視点から書かれています。Aパートは現在の矢上。Bパートは25年前の矢上。

管理人はAもBも同じ時系列で起こっていて救助側と救助される側の両方の視点から書かれていると作者の狙い通りに誤認してしまいました。

灰色の北壁

・御田村
カスール・ベーラの登頂に初めて立ったと言われている日本人。

・刈谷
御田村の登頂から19年後にカスール・ベーラの北壁を制覇して登頂した日本人。

複雑なお話。

御田村はカスール・ベーラの登頂に初めて立った日本人と言われていたが実際は登頂時に怪我をしていたこともあり記憶が混濁していて御田村が登った場所は山の頂上ではなかった。
※しかし御田村本人は記憶が混濁しており頂上に登ったと自身を疑ってはいなかった。

19年後に刈谷が登頂に成功した時に御田村が登頂時に撮影した写真が頂上からのものでないことに気が付いた。

刈谷は御田村が自分がずるをしている自覚があるなら御田村が登頂していない事実を公表しようと考えたが、御田村は本当に怪我で記憶が混乱していただけで自分は登頂したと信じているならこの事実は黙っていようと考えた。

そして刈谷は御田村に写真を同封した一通の手紙を送る。
その手紙には刈谷が登頂したときに御田村が登頂したと誤認しているスポットで撮影した写真が同封されており、その写真が御田村が登頂した時の写真とうり二つだと手紙で指摘したのだ。

刈谷は御田村が自分の登頂にやましいところがあるのならやぶへぶになるので、刈谷を糾弾しないと考えた。逆に自らの登頂を信じているならずるをした刈谷を許すことはせず糾弾してくるはずだと考えた。

結果、御田村は刈谷を糾弾した。

刈谷は御田村が自身の登頂を疑っていないと確信したため、御田村が登頂してないという事実を隠すことにしたのであった。

雪の慰霊碑

・坂入慎作
譲の父。亡くなった息子のことをふっきるため、多映子の想いに応えるために譲が亡くなった北笠山に向かう。

・坂入譲
北笠山に登頂中に遭難して亡くなる。多映子と婚約中であった。

・岡上多映子
譲の婚約者。亡くなった譲のことがふっきれずにいて、譲の面影を持つ父の慎作に恋心を抱いてしまう。

・野々垣雅司
譲のいとこ。譲が遭難した時に一緒に山に行かなかったことを後悔している。
また譲の婚約者の多映子にずっと想いを寄せていた。

他の2作の作品に比べるとシンプルです。

慎作は多映子の気持を受け止めるために譲が亡くなった北笠山に登ることを決意したのであった。
この山を登りきることが出来たら自分が譲の婚約者の多映子と交際することを譲が許してくれたのだと考えたためだ。

山に登りにいった慎作を雅司と多映子は譲の後を追おうとしていると誤解し追いかけていく。

最終的に雅司が慎作に追いつき慎作が多映子への想いを告白するところで話が終わる。

感想

ホワイトアウトもそうですけど真保さんは雪山を題材にした話が多いですが何か関連があるのですかね?
個人的には本のタイトルにもなっている「灰色の北壁」が一番楽しめました。
タイトルとURLをコピーしました