10ヶ月前に記憶を持ったまま戻れたらあなたは何をしますか?
久しぶりにページをめくる手が止まらない小説に出会いました。
SFミステリー好きなら必読の1冊です。
あらすじ
現在の記憶を持ったまま過去に戻れるとしたら?
RPGの2週目のように全てのイベントを知り尽くしているからこそ完璧な対応が出来るはず。
10ヶ月前に戻った10人の男女。
過去に戻れたと喜んでいるのもつかの間。
一人、また一人と過去に戻ったメンバーが不審な死を遂げている。
はたしてその死の真相とは。
ネタバレ
本作では10ヶ月前の過去に戻ることを「リピート」と呼んでいます。
リピートについて
リピートについての説明。
リピートの方法
空に浮かぶ黒いオーロラに飛び込むことで10ヶ月前にリピートすることが出来ます。
本作ではヘリを使ってオーロラに飛び込みました。
リピートは黒いオーロラの場所さえ覚えていれば何回でも出来ます。
ちなみにリピートした人達のことをリピーターと呼びます。
リピートに持っていける物
黒いオーロラに飛び込むと10ヶ月前の自分の肉体に意識だけが入り込んだ状態になる。
過去に物は持っていけず、唯一持っていけるのは未来の記憶だけである。
よってリピートする際は未来の情報をいかに正確に記憶しているかが重要となる。
リピート世界への案内人:風間
リピート世界へメンバーを連れていく張本人。
本人は何度もリピートを繰り返しており、今回のリピートが10回目となる。
本作では10回目のリピートのことをR10と呼んでいる。
R0 オリジナルの世界
R1 1回目のリピート世界
R2 2回目のリピート世界・・・
といった感じである。
リピート世界での歴史修正力
リピート世界では過去と違う行動を取ることによって歴史を変えることが可能となる。
ただし多少の変化では歴史は動かず、本来のあるべき歴史に修正される。
リピート世界R10での死の真相
リピートしたR10の世界でリピーター達が次々に殺害されている。
実はR10の世界で殺害された風間・池田を除く8人は本来R9の世界で何らかの事故や事件により命を落とす運命であった。
リピートの常連者である風間と池田はリピートすることに飽きており一つの退屈しのぎを考えた。
それは本来死ぬ運命にあるはずのメンバーをR9の世界で助けて、そのメンバーをR10の世界にリピートさせて本来の死ぬ運命に抗い生き残ることが出来るかというゲームであった。
だから特定の誰かがリピーター達を殺していたわけではなく、もともと事故や事件で命を落とす運命だったため、それを阻止することが出来ずR10の世界でも命を落としていたのだった。
登場人物の顛末
ここでは登場人物の顛末をまとめて記載する。
・毛利圭佑(もうりけいすけ)
本作の主人公で大学4年生。
容姿がよく女性に人気がある。
篠崎と恋仲になる。
本来の運命では恋人由子に痴情のもつれから刺されて死ぬはずだった。
リピートしたR10の世界では由子に刺される前に逆に殺害することによって死ぬ運命を回避する。
R10にリピートしたメンバー全員が命を落とす中、唯一R11の世界へのリピートに成功するが、リピート直後に車に轢かれて死亡する。
・篠崎鮎実(しのざきあゆみ)
リピートメンバーの紅一点。
リピートしたR10の世界で毛利と恋仲になり、子供を身ごもる。
本来の運命では自宅に整備不良のヘリコプターが墜落して死亡する。
リピートしたR10の世界でも毛利の子を身ごもるという違いはあったものの、ヘリコプターが墜落して死亡する。
・風間(かざま)
毛利達をリピート世界へ連れて行った張本人。
10回目のリピート。
毛利達8人をR9の世界で助けて、R10の世界に連れていき自分たちが助けなければどうなるか、池田とともに退屈しのぎに遊んでいた人物。
R10に一緒にリピートした大森にリピーター殺害事件の犯人と勘違いされて銃で撃たれて死亡する。
※リピーター達の死の真相は純粋な事件や事故であり風間は手を下していない。
・池田(いけだ)
初めてリピートをする風に装っているが実は風間のリピート仲間。
風間と同じく今回が10回目のリピート。
最後まで生き残った毛利、天童の3人でR11の世界へリピートしようとする。
しかし自分たちを弄んだことに怒りを覚えた天童に銃で撃たれてR10の世界で死亡する。
・天童(てんどう)
メンバー随一の切れ者。
リピーター達の死の真相を自力で見破った人物。
さらに自らリピートするためにヘリコプターの航空免許をアメリカで取得する行動力も持ち合わせている。
池田に弄ばれた仕返しをするために、R11にリピートする直前に銃で射殺するが、池田からも銃で撃たれてしまい、R11にリピートする直前で死亡してしまう。
・大森(おおもり)
食品化学関係の研究者。
本来の運命では学会に出席するために乗車した列車の事故で死亡するはずだった。
しかしリピーター達が次々と殺される状況に恐怖し、外出できない状況に追い込まれていたため一時は助かった。
その後リピーター達の殺害事件の犯人を自分たちをR10の世界へ連れてきた風間だと勘違いし、銃で射殺するも、その直後に池田にマンションから突き落とされて死亡する。
・郷原(ごうはら)
会社経営者。
本来の運命では連続殺人犯麻生に殺害される予定であった。
R9の世界では風間達の働きで助かったが、R10の世界では本来の運命通りに連続殺人犯麻生に殺害されてしまう。
・高橋(タカハシ)
トラック運転手。
本来の運命ではアパートの火事で死亡するはずだった。
しかしR10の世界にリピートした時間はトラックを運転していた時間であり、運転中の体にリピートしてしまったためリピートのショックで一瞬意識を失い事故を起こし死亡する。
・坪井(つぼい)
浪人生。
大学受験の問題を暗記して東大に合格することを目的にリピートする。
本来の運命では連続殺人犯麻生に殺害されるはずであった。
R10の世界もその運命を阻止することはできず麻生に殺害される。
・横沢(よこさわ)
サラリーマン。
本来の運命では放火により死亡するはずであった。
R10の世界もその運命を阻止することはできず放火により死亡する。
まとめ
この小説の面白いのは読んでいてリピーターたちが次々と殺されるため、犯人はリピーター達を狙っていると勘違いさせられる点である。
リピーターの立場でも自分たちの仲間が次々殺されている。誰かがリピーターである自分たちを狙っているに違いないと勘違いしてしまうのである。
しかしその真相はR9の世界ではリピーターである風間と池田によって命が救われただけで、本来は死ぬ運命にあったというだけなのである。
特定の犯人がいないというのはミステリーものとしてはかなり斬新な結末ではないだろうか。
色々と書いてみたが未読の人はぜひ読んでみることをお勧めします。
滅多にないページをめくる手がとまらない小説と出会えます。