広瀬正の小説「ツィス」のラストを考察

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前回のエロスに続き、広瀬正さんによる小説「ツィス」の考察記事です。

 

 

 

あらすじ
東京近郊の海辺の町で密かにささやかれはじめた奇妙な噂。謎のツィス音=二点嬰ハ音が絶え間なく、至るところで聴こえるというのだ。はじめは耳鳴りと思われたこの不快な音はやがて強さを増し、遂に首都圏に波及して、前代未聞の大公害事件に発展していく。耳障りな音が次第に破壊していく平穏な日常。その時、人びとが選んだ道は?そして「ツィス」の正体は?息もつかせぬパニック小説の傑作。
 

ネタバレ考察

考察の前に本作の内容を簡単に説明します。

ある日謎の音「ツィス」音が首都圏に発生します。

最初は耳の良い一部の人にしか聞こえないツィス音でしたが、徐々に大きくなっていき、終いには完全防音の耳栓をしないと人が生活出来ない位までの大きさとなります。

そんな状態なので首都圏に住む人は一部の留守部隊を残してやむを得ずツィス音が聞こえてこない地方への疎開を余儀なくされます。

疎開も終わったある日、留守部隊の一人が外出する際の必需品である耳栓をうっかり忘れて外出してしまいます。

本来であれば耳栓なしではツィス音には1秒も耐えられないはずが全く影響がありません。そう、ツィス音が聞こえてこないのです。

こうしてツィス音がなくなったことが確認出来たため疎開も終わり無事めでたしめでたしとなります。

 

さて内容紹介はここまでにします。

 

エンディングまで読んだ方なら2つの疑問が出てくると思います。1つ目はツィス音は本当に発生していたのかというもの。そうして2つ目はツィス音が発生していないとするならば事件の黒幕は誰かというもの。

ようやく本題になりましたがこの2つについて考えてみたいと思います。

 

ツィス音は本当に発生していたのか

エンディングで問題提起がなされます。そもそもツィス音は発生していたのかと。

なぜそのような問題提起がツィス音を1度も聞いたことがない人達がいることです。

その聞こえなかった人たちの大多数はテレビや新聞の報道によりツィス音に備えるため外出時に耳栓をしたり、部屋に防音工事をしたりしたため、そのおかげでツィス音が一度も聞くことがなかったとも言えますが、テレビや新聞を全く読まないいわゆるホームレスの人たちは全くそういう対策をしていないも関わらずツィス音は聞こえていなかったのです(その人たちは精神病と判断されましたが)。

つまりこういう説明がつきます。

ツィス音が聞こえたと主張する人達
→ツィス音が発生しているとテレビで放送されたため暗示にかかりツィス音が聞こえる気になってしまった

ツィス音が聞こえてこない人達
→テレビや新聞を見ていないのでそのような暗示にかかることがなかったのでツィス音は聞こえてこなかった

更に首都圏にはツィス音測定器なるものが設置されており、その測定器によるとツィス音が測定されていましたが、実は故障していることがわかりました。

ツィス音が発生していないと断言できる明確な描写はないのですが、上記のように怪しい材料がたくさんあるので管理人としてはツィス音は実際は発生しておらず、一部の人が暗示にかかっただけと考察します。

そうしないと次の考察に進めないので。。

しかしそれで疎開までしちゃうのだから集団心理とは恐ろしいです。

黒幕は誰か

さてツィス音は本当は発生しておらず一部の人がテレビや新聞の情報から暗示にかかった、つまり気のせいだったとするのなら暗示にかけたのは誰なのでしょうか。

第一候補はツィス音の測定を行い、ツィス音測定器の開発を行い、さらにはテレビに出演してツィス音による危機を繰り返し伝えていた日比野教授です。

教授はツィス音測定器の開発で多額の儲けを手にしていますし、本当は発生してないツィス音を発生していると偽るメリットがある人物です。

しかし本作の最後では精神科医の秋葉医師が何やらあやしい人物として描かれています。

でも彼にはそんなことをする動機が見当たらないですし、暗示にかけようと思っても日比野教授と違い「音」の専門家でもない彼はテレビに出演出来る立場にもないです。そんなわけで色々とあやしそうな秋葉医師ではありますが関係ないと考えられます。

やはりツィス音事件についてひたすら警鐘を鳴らし続け、ツィス音事件で大儲けをした日比野教授が黒幕と結論づけるしかないというのが管理人の見解です。

もっと大きな陰謀説も考えたのですがなかなかしっくりくるのがなくありきたりな考察になってしまいました。。。

 

まとめ

40年近く昔の本なので、ちょっと古臭さを感じる表現もありますが、十分今読んでも楽しめる1冊でした。

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