島田荘司氏によるミステリー小説のネタバレ感想記事。
あらすじ
東京四谷の雑居ビルの放火事件で若い警備員が焼死する。不審な死に警察の捜査が始まった。若者の日常生活に僅かに存在した女の影……。女の行方を追ううちに次は赤坂で放火が。そして現場に“東京”と謎の文字!索漠たる都市の内奥と現代人の心を見据えて鬼才が描く、印象深い推理長編。
ネタバレ
ここから犯人も含めてネタバレしていきます。
・中村
事件を追う刑事。
ガードマンの土屋が勤務中に睡眠薬を飲んで寝ている間に焼死した事件を放火と疑い、婚約者である由紀子の足取りを追う。
そして最後は放火犯の菱山にたどり着く。
土屋が焼死した事件は由紀子が土屋の弁当に睡眠薬を混ぜて菱山が放火したことによるものであった。
犯行動機は二人とも異なっており、由紀子は金持ちの若主人に見初められたため婚約者である土屋が邪魔になった、菱山は東京にある堀が埋め立てられることにより江戸の文化が失われていることに腹を立てて堀があった各地を放火した。
・土屋
菱山による放火の被害者。
菱山の放火計画を知っていた由紀子が放火予定場所で偶然土屋が勤務をしていることに目をつけた。
若主人に見初められた由紀子は婚約者の土屋を亡き者にするために、菱山の犯行当日に土屋の弁当に睡眠薬を混ぜたため土屋は火災に気が付くことなく死亡してしまう。
・由紀子
土屋殺害の間接的な犯人であり菱山殺害の犯人。
貧しい地方の出身。
菱山と出会い身を寄せるがうまくいかなくなり別れる。
菱山の子どもを身ごもっていたことに気が付くも自分一人で育てることが出来ずに神社に赤ん坊を捨てる。
その後は精神的に弱っている時に土屋と出会い同棲まで関係は進展するが、新たな勤務先の若主人に好意を寄せられたために菱山の放火計画を利用して土屋を殺害する。
その後も菱山は放火計画を実行していったが、由紀子は自分の子どもがもらわれていったマンションに菱山が放火することを知ったため放火直前で菱山を刺殺し、張り込んでいた中村に現行犯逮捕される。
・井比敦子
由紀子の唯一の親友。
菱山を放火犯と怪しんでいた。
中村にその情報を伝える直前に菱山にばれて殺害された。
・菱山
一連の放火犯。
かつて東京の各地にあった堀が埋め立てられていることで、江戸の文化が失われていると考えて、憤りを感じて放火計画を立てて次々と実行した。
また由紀子の交際相手でもある。
最終的に自分と由紀子の子どもがもらわれていったマンションに放火しようとしたため由紀子に刺殺された。
なお菱山は自分の子どもがそのマンションに住んでいることを知らなかった。
感想
途中までは面白かったのにという作品。
刑事の中村が一件の火事を放火と疑い、焼死したガードマン土屋の婚約者である由紀子の足取りをかすかな手がかりをもとに調べていくあたりは文句なしに面白かった。
ただ謎がどんどん明らかになっていくとちょっとなという点が目についてきた。
例えば刑事の中村は実行犯は菱山だから由紀子が菱山を最後に刺さなければ由紀子に同情して由紀子の罪は問わないというような心中を明らかにしていたが、管理人としては由紀子に同情できる余地が見当たらず困惑した。
完全にいかれている菱山のみを最後まで愛していると語る由紀子が、金目当てで土屋から金持ちの若主人に乗り換えるとかもう嫌悪感しかなかった。
散々土屋に助けてもらったのにどういうことなのかと思ってしまう。
また由紀子は菱山との間に出来た子供も捨てているし正直めちゃくちゃ。
ということで由紀子に全く同情出来ず魅力を感じない点が残念。
そしてラストも由紀子が菱山を刺して終わりというのもなんだかなぁという感じであった。
中村が由紀子の足取りを追っているあたりは文句なしに面白かっただけに後半が残念だと感じた作品。
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