ドラマ化もされた漫画「テセウスの船」の全事件と残された謎の考察記事です。
一度漫画を読んでみたけれどよくわからなかったという方はぜひご覧ください。
テセウスの船には主人公の佐野心(田村心)がタイムスリップを2回行ったことで世界線が3つ存在します。
※なお2回目のタイムスリップの際には心だけでなく一連の事件の犯人である加藤みきおも心と一緒にタイムスリップをしています。
具体的には下記の3つの世界線が存在します。
①心がタイムスリップする前の世界
②①の世界から2017年の心が1989年1月7日にタイムスリップしたことで出来た世界
③②の世界から2017年に戻った心が、事件の犯人加藤みきおとともに1989年6月に再びタイムスリップしたことで出来た世界
ややこしいのですが、主人公の心が2回タイムスリップしたことで①タイムスリップ前の世界線、②1回目にタイムスリップしたことで出来た世界、③2回目にタイムスリップしたことで出来た世界の3つがあると覚えて頂ければOKです。
なお③の世界については心が2回目にタイムスリップしたのが1989年の6月であるため、1989年6月以前の事象については②と同じになります。
全ての事件を解説
上述の通り漫画テセウスの船では3つの世界が存在します。
心がタイムスリップしたことで出来た3つの世界で事件がどのように変わったのか事件別に見ていきたいと思います。
なお心が2回目にタイムスリップしたのは1989年6月です。
よってそれ1989年6月以前に起きた事件については心の2回目のタイムスリップの影響を受けないため二つ目の世界と三つ目の世界は同じ出来事が起きています。
それでは早速見ていきましょう。
佐野家の長女である佐野鈴が自宅屋根から落下する事件
1989年1月7日に佐野家の長女、佐野鈴が除雪作業中に屋根から転落する事件。
本事件については加藤みきおは関与しておらず正真正銘の単なる事故。
<一つ目の世界線>
自宅の屋根から落ちて雪に埋まっているところを新聞配達員の長谷川翼が発見。
命に別状はなかったものの凍傷により顔に痣が残る。
<二つ目・三つ目の世界線>※1989年6月以前の事件のため同じ結果。
自宅の屋根から落ちて雪に埋まっているところを心が発見。
早期に発見したため顔に凍傷の後は残らず。
三島医院の次女である三島千夏がパラコートを誤飲する事件
1989年1月7日に三島医院の次女三島千夏(5歳)が自宅の倉庫で誤ってパラコート(除草剤)を飲んでしまい死亡したとされる事件。
<一つ目の世界線>
加藤みきおが三島千夏にラムネだと騙し、水で薄めたパラコートを飲まして毒殺した。
<二つ目・三つ目の世界線>※1989年6月以前の事件のため同じ結果。
加藤みきおが三島千夏にラムネだと騙し、水で薄めたパラコートを飲まして毒殺した。
一つ目の世界線との違いとして心が事件を防ぐために三島家の倉庫にあったパラコートを持ち出している。
未来での新聞記事を見た心は倉庫のパラコートを盗めば誤飲事件が防げると思ったからだ。
しかし実際は加藤みきおが外部から調達したパラコートを飲ませていたため事件を防ぐことは出来なかった。
木村さつきの父である木村敏行が雪崩に巻き込まれる事件
1989年1月12日の事故。
音臼小学校の学校職員木村さつきの父である木村敏行が車を運転中に雪崩に巻き込まれる事件。
※なお木村敏行は木村鍍金工場の経営者でもある。
<一つ目の世界線>
音臼岳山道の荒川橋付近を運転中に雪崩に巻き込まれて重体となる。
※その後の容体は不明。
<二つ目・三つ目の世界線>※1989年6月以前の事件のため同じ結果。
心が未来の知識をもとに忠告したことで雪崩に巻き込まれることはなかった。
元町議会議員の田中義男に関する事件
三つ目の世界線全てでそれぞれ異なる結末を迎える。
<一つ目の世界線>
1989年2月5日に心筋梗塞で死亡。
加藤みきおによる関与は不明だが二つ目・三つ目の世界線において2月5日時点で田中義男が生存していたことを考えると加藤みきおの何らかの犯行により心筋梗塞を巻き起こしたことは十分考えらえれる。
※岸田由紀のメモに第一発見者は近所の少年とあるがおそらくこれは加藤みきおである。
<二つ目の世界線>
1989年6月24日の音臼小学校無差別毒殺事件があった日に生存していることが確認できる(さつきがお泊り会に参加した田中に常用薬を飲ませようとする描写がある)。
※翌日に青酸カリ入りの牛乳を飲んだかは不明。
<三つ目の世界線>
1989年6月21日に1989年の小学6年生の加藤みきおと2017年からタイムスリップした加藤みきおの2人が自宅を放火したことにより死亡する。
目的は事件を起こして佐野文吾を家から引き離すため。
※その隙に加藤みきおはお腹にいる心もろとも佐野和子を殺害しようとした。
三島医院の長女である三島明音が行方不明になる事件
次女の千夏に続き長女の明音が行方不明になった事件。
<一つ目の世界線>
1989年3月12日に行方不明になったまま発見されず。
二つ目・三つ目の世界線と同様に加藤みきおと長谷川翼の犯行だと思われるが詳細は明かされず。
<二つ目・三つ目の世界線>※1989年6月以前の事件のため同じ結果。
1989年2月5日に加藤みきおに命じられて長谷川翼が三島明音を誘拐。
長谷川翼により音臼岳の中にある小屋に監禁された上で性的暴行を受ける。
性的暴行を受けた明音を加藤みきおが青酸カリで毒殺しようとするがなかなか死亡しないため最終的にはみきおに首を絞めて殺害した。
なお長谷川翼も青酸カリにより服毒死する。
※犯人の考察は後述する。
佐々木紀子が青酸カリで自殺をする事件
心のタイムスリップによって事件の発生有無が変わった事例。
一つ目の世界線では4月6日に事件が起こったが二つ目・三つ目の世界線では事件そのものが発生しなかった。
<一つ目の世界線>
1989年4月6日に発生。
事件の詳細は結局明かされていないが加藤みきおに自殺に見せかけて毒殺されたものと思われる。
<二つ目・三つ目の世界線>※1989年6月以前の事件のため同じ結果。
佐々木紀子は偶然に金丸刑事と加藤みきおの立ち話を聞いてしまう。
立ち話の内容は加藤みきおが心が投げ捨てたこれから音臼で起こる事件の内容を記したノートを拾ったことについて。
話の中でみきおは金丸にこれから音臼で起こる事件について心のノートに基づき説明する。
その中の一つに佐々木紀子の青酸カリによる自殺事件があった。
自分が自殺する事件がこれから起こると聞いた佐々木紀子は怖くなり町を出てしまったため事件が起きずに済んだ。
金丸刑事が崖から転落死する事件
一連の事件を捜査する金丸刑事が崖から転落死する事件。
金丸刑事は心がタイムスリップしたことによって命を落とすことになる。
<一つ目の世界線>
金丸刑事は転落死はせず生存している。
<二つ目・三つ目の世界線>※1989年6月以前の事件のため同じ結果。
1989年2月26日に崖から転落死する。
加藤みきおと金丸刑事がタイムスリップしてきた心が捨てた音臼でこれから起こる事件が記されているノートについて立ち話をする。
加藤みきおは話しながら金丸刑事を崖際に誘導し、油断しているところを後ろから突き落とした。
※なおこの一連のやり取りを佐々木紀子は偶然目撃していた。
音臼小無差別殺人事件
本作品の最大の事件にして佐野一家のすべてを変えてしまった事件。
一つ目・二つ目の世界のどちらも総勢21人がお泊り会の際に青酸カリで死亡した。
なお一つ目の世界と二つ目の世界で死亡した人間は異なる。
<一つ目の世界線>
犯人は加藤みきお。
1989年6月24日の学校のお泊り会のジュースに青酸カリを混ぜた。
なお、事前に青酸カリを佐野家に隠しておいたことで警察は犯人が佐野文吾と特定した。
<二つ目の世界線>
犯人は加藤みきお。
心の未来の情報をもとに佐野文吾が青酸カリによる事件を警戒していたため、実際に事件が起きたのは6月24日ではなく1泊した後の6月25日の朝であった。
加藤みきおは牛乳の中に青酸カリが混ぜて事件を起こした。
この際も加藤みきおは佐野文吾の家に青酸カリを事前に忍ばせておいた。
この佐野家の自宅から青酸カリとお泊り会の最中に事件を警戒して飲食物を見張っていた佐野文吾の行動が逆に怪しく見られ逮捕された。
なお二つ目の世界線で木村さつきが助かったのは木村さつきが牛乳が飲めないことを知っていたみきおがあえて青酸カリを牛乳に入れたため。
※事件の時点では木村さつきはみきおの母親になる宣言はしておらず、なぜみきおが木村さつきだけを対象から外したのかは不明。考察は後述
<三つ目の世界線>
田村心と加藤みきおが2017年からタイムスリップしたことで事件は発生しなかった。
・田村心による影響
心は文吾と一緒に事件が起きないようにお泊り会の現場を警備。
・加藤みきおによる影響
未来の加藤みきおは1989年のみきおに音臼小無差別事件を起こすとあれだけ欲しがっていた佐野鈴が変わってしまうと忠告。
※実際犯罪者の子供となった鈴は二つ目の世界線で名前も顔も変えて生きている。
その忠告が効いたのかそもそもお泊り会での計画自体を取りやめることになった。
タイムスリップによる現代世界での影響のまとめ
心が1989年にタイムスリップしたことにより2017年の世界でどのような影響が起きたのかを人物ごとにまとめます。
佐野心(田村心)
本作の主人公。
1989年の音臼小無差別殺人事件の際はまだ母和子のお腹におり生まれていない。
<一つ目の世界線>
犯罪者佐野文吾の息子として人目を忍んで常にマスクをして生きている。
大学時代に知り合った岸田由紀と結婚し、未来という子供がいる。
※妻の由紀は未来を出産した際に死亡してしまう。
詳細な仕事内容は不明だが倉庫で働いている。
本来は心ではなく正義と名付けられるはずだったが事件の後で周囲のバッシングを考えるとそんな名をつけることは出来ず「心」になった。
<二つ目の世界線>
母和子が事件の後すぐに心中してしまったため、しらぎくの杜という児童養護施設で姉の鈴とともに育てられる。
この世界では由紀とは出会っておらず独身のままである。
本来は心ではなく正義と名付けられるはずだったが事件の後で周囲のバッシングを考えるとそんな名をつけることは出来ず「心」になった。
<三つ目の世界線>
父の文吾が事件の犯人にされなかった世界。
家族全員が健在で仲も良い様子。
教師として働いており職場で知り合った岸田由紀と恋に落ちる。
なおこの世界の心は一つ目・二つ目の世界での記憶を有しておらず厳密にいうと別人である。
※一つ目・二つ目の世界の心は加藤みきおに刺されて死亡してしまったため。
※三つ目の世界の心は二つ目の世界で和子のお腹にいた心が成長した姿。
三つ目の世界でも本来は正義と名付けられるはずだったが文吾が命を救ってくれた未来の心に敬意を表して「心」と名付けることとした。
佐野文吾
心の父親で警察官。
もう一人の主人公。
<一つ目の世界線>
1989年6月24日に起きた音臼小無差別殺人事件の犯人として逮捕される。
2017年になった現代でも刑務所の中で無実を訴え続けている。
※実際の犯人は加藤みきお
<二つ目の世界線>
1989年6月25日に起きた音臼小無差別殺人事件の犯人として逮捕される。
2017年になった現代でも刑務所の中で無実を訴え続けている。
過去にタイムスリップした心と出会ったことを覚えている。
※実際の犯人は加藤みきお
<三つ目の世界線>
音臼小無差別殺人事件は起きなかったため犯人にはされず現代でも家族と仲良く暮らしている。
佐野和子
心の母親で文吾の妻。
<一つ目の世界線>
犯罪者の家族として人目を忍んで生きている。
犯罪者の家族である自分たちは決して人の前で笑ったりしてはいけないと家族に教えを説いていた。
<二つ目の世界線>
音臼小無差別殺人事件で文吾が逮捕された後、一家心中を図り死亡する。
※なお鈴と心は生存する。
<三つ目の世界線>
家族で仲良く暮らしている。
佐野鈴
心の姉。
音臼小無差別殺人事件の当時は小学6年生であった。
<一つ目の世界線>
現代で心や和子とは連絡を取っていないようで消息不明。
<二つ目の世界線>
整形し名前を変えて、加藤みきおと婚約をしている。
なおお腹にはみきおの子がいる。
みきおが音臼小無差別殺人事件の犯人だと知り絶望する。
<三つ目の世界線>
家族で仲良く暮らしている。
また相手は不明だが結婚しているようでお腹に子供がいる。
佐野慎吾
心の兄で鈴の弟。
1989年の音臼小無差別殺人事件の際は小学校1年生であった。
<一つ目の世界線>
現代で心や和子とは連絡を取っていないようで消息不明。
2007年に一度心にお金を渡しに来ている。
<二つ目の世界線>
音臼小無差別殺人事件で文吾が逮捕された後、和子が一家心中を図ったため死亡する。
※鈴と心は生存。
<三つ目の世界線>
家族で仲良く暮らしている。
佐々木紀子
長谷川翼の婚約者。木村鍍金工場から青酸カリを盗んだ張本人。
<一つ目の世界線>
1989年4月6日に青酸カリにより服毒死している。
※後の報道では自殺だとされているが加藤みきおによる殺害だと思われる。
<二つ目の世界線>
1989年2月に町を飛び出したおかけで毒殺されることなく穏やかな結婚生活を送っていた。
1989年2月の加藤みきおと金丸刑事の立ち話から一連の事件の犯人は加藤みきおであると気がついており、自身が余命宣告されたことから真実を明かそうとする。
しかし加藤みきおを養子として引き取った木村さつきによって殺害される。
※ちなみに現代では夫は亡くなっており子供も転勤族で会う機会はほとんどない。
<三つ目の世界線>
村を抜け出したため音臼小無差別殺人事件の際も健在であり、2017年でも生存していると考えられる。
木村さつき
木村鍍金工場の木村敏行の娘。
また音臼小学校の教員でもある。
年齢は30歳。
<一つ目の世界線>
1989年6月24日の音臼小無差別殺人事件に巻き込まれて死亡する。
<二つ目の世界線>
1989年6月25日に起きた音臼小無差別殺人事件には巻き込まれず生存。
事件の後に身寄りがない加藤みきおを息子として引き取る。
その後はみきおの義母としてみきおを支え続ける。
みきおが音臼小無差別殺人事件の犯人であることに途中から気が付いているがみきおの味方をしている。
2017年ではみきおが犯人であることを暴露しようとした佐々木紀子を殺害し、自らは佐野鈴に刺されたように偽装する。
しかしその後、偽装のやり方が甘い点を加藤みきお指摘され、すべてが露見する前に加藤みきおに毒殺される。
<三つ目の世界線>
1989年6月24日のお泊り会当日に当時の加藤みきおに呼び出される。
そして呼び出されたところを2017年からタイムスリップしてきた加藤みきおに待ち伏せされ絞殺される。
どの世界線でも殺害されてしまう不遇な人。
加藤みきお
一連の事件の犯人。音臼小無差別殺人事件の当時は小学6年生。
<一つ目の世界線>
現代での描写は一切明かされていない。
<二つ目の世界線>
最大の目的であった佐野鈴と婚約している。
その後心と一緒に1989年6月にタイムスリップする。
<三つ目の世界線>
数々の事件の犯人として少年院に入れられており2017年現在は出所している。
岸田由紀
一つ目及び三つ目の世界における心の結婚相手及び婚約者。
<一つ目の世界線>
心と結婚し未来という子供を出産するが、出産時に死亡してしまう。
佐野文吾は冤罪だと考えており当時の事件のことを調べていた。
※心とは大学時代に知り合いお互い教師を目指していた。
<二つ目の世界線>
もともと教師を目指していたが音臼事件の佐野和子のインタビュー記事を見て加害者家族が苦しめられていることを初めて知りショックを受ける。
そして音臼事件の真相を調べるために記者になった。
なおバツイチで3歳になる息子がいる。
<三つ目の世界線>
教師になっていて同じ教師の心と交際をしている。
ストーリーの謎を考察
数々の事件が過去と未来で交錯するテセウスの船。
一度読んだだけではなかなか事件を解明するのは難しいと思います。
ここではストーリー上で管理人が疑問に思った点や整理した点をまとめていきます。
二つ目・三つ目の世界で長谷川翼を毒殺したのは誰か?
長谷川翼は明音の死にショックを受けて自殺したものと思われる。
根拠としては加藤みきお自身が犯罪を記録した録音テープにて「翼が死んだ」と語っていたためです。
例えば明音の時は自身の犯行によるもののため「明音を殺した」とテープに記録しているに対して、「翼が死んだ」と記録しているのはみきお自身の犯行ではないからといえます。
また現場に落ちていた青酸カリの容器は佐々木紀子が木村鍍金工場から盗んできた容器ではなかったため、みきおに渡したものとは別に翼も青酸カリを保有していたと考えられます。
※よって自殺に使える青酸カリを保有していた。
二つ目・三つ目の世界で佐々木紀子が死亡しなかった理由は?
心がタイムスリップする前の世界では1989年4月6日に佐々木紀子は死亡しているはずであった。
しかしタイムスリップ後の世界では生存しています。
これは1989年2月26日に加藤みきおと金丸刑事の立ち話を偶然佐々木紀子が聞いたためです。
加藤みきおは心が捨てたはずのこれから音臼で起こる事件をメモしたノートを拾っていて、そのことを金丸刑事に話していました。
その中でこれから起こる事件の一つとして4月6日に佐々木紀子が自殺する事件が話題にのぼります。
偶然その話を聞いた佐々木紀子は自分が自殺するという話を聞いて怖くなり音臼から逃げたため死亡することはありませんでした。
またタイムスリップ前の世界では青酸カリで死亡しています。
この際の犯人は青酸カリを保有しているはずの長谷川翼と加藤みきおの二人が考えられますが、明音が死亡したときの翼の動揺の仕方を見ると加藤みきおが毒殺したと考えるのが妥当でしょう。
二つ目の世界で木村さつきが死亡しなかった理由は?
心がタイムスリップする前の一つ目の世界では木村さつきは1989年6月24日の音臼小無差別殺人事件で死亡していますが心がタイムスリップした後の二つ目の世界では生存しています。
これはみきおがさつきが青酸カリを飲まないようにさつきが飲めない牛乳に青酸カリを入れたためです。
ではなぜみきおはさつきを生存させたのか?
考えられる理由としてはさつきがみきおを引き取ることを提案していたからだと思います。
しかし描写を見る限りさつきがみきおを引き取ることを提案したのはみきおが車いすに乗っていることから1989年6月25日のお泊り会の事件の後だと考えられます。
ただそれ以前にも何らかの形で二つ目の世界でみきおを引き取ることをほのめかしていた可能性はあります。
その提案があったからこそみきおもさつきを生かしておこうと考えたのかもしれません。
ではなぜ一つ目の世界(心がタイムスリップしない世界)ではみきおを引き取る提案がさつきからされなかったのでしょうか。
おそらくさつきがみきおを引き取るトリガーとなっているのが木村鍍金工場の札幌移転なのでしょう。
父の木村鍍金工場が札幌に移転することになったためさつき自身も音臼小での教師を辞めて父の会社を手伝うことになります。
おそらく音臼を離れることがきっかけとなりみきおを引き取る決意が出来たのだと思われます。
では次になぜ一つ目の世界では札幌に移転する話がなかったのか。
これは父の敏行が雪崩に巻き込まれて重体になったためでしょう。
おそらく重体になった敏行は札幌移転どころの話ではなくなってしまったのだと思います。
しかし二つ目の世界では心が雪崩から敏行を救ったため札幌移転の話が出てきてさつきがみきおを引き取る決意が出来たと考えると納得が行きます。
まとめると一つ目の世界は父敏行が重体となったため札幌移転の話もなく、さつきがみきおも引き取る話もなかった。その結果みきおもさつきを音臼小無差別殺人事件の対象から外すことなく殺害した。
しかし二つ目の世界では心が敏行を雪崩から助けたため、木村鍍金工場の事業が順調に進み札幌移転の話が出てきた。
さつきも教師を辞めて札幌にいくことになる。
その結果、音臼を離れることになったのでみきおを引きとろうと決意した。
その話があったためみきおもさつきを無差別殺人事件の対象から外した。
上記のように考えるとしっくりきます。
1989年に佐野一家がタイムカプセルに入れたものは何か?
謎ではないがまとめです。
・佐野和子
古いカメラ。
・佐野慎吾
キン消し
・佐野鈴
当時使っていた筆箱
・佐野文吾
手紙。
中には「どんな過去があろうとも過去に逃げず今を生きろ by父」と書かれている。
・佐野心
自らが文吾と和子の子供であることと、岸田由紀と結婚して未来という子供がいることを明らかにした家系図。
また家系図とともに由紀との結婚指輪を封筒に入れている。
なぜ長谷川翼は加藤みきおの言いなりになっていたのか?
長谷川翼は加藤みきおに命じられて佐々木紀子に青酸カリを盗ませたり三島明音に性的暴行を働いたりとみきおの言いなりになっています。
なぜ言いなりになっているかは明記されていませんが、みきおが翼に対して言うことを聞かないと「翼君が僕にしたこと・・・全部言うよ」と脅すシーンがあります。
翼がロリコンであることを考えるとみきおに対しても性的な興味を抱き肉体関係があったと考えるのが妥当でしょう。
みきおは自分との肉体関係をネタに翼をゆすっていたのだと思います。
なおこの肉体関係をどちらからもちかけたかはわかりませんが、みきおなら翼の歪んだ性的趣味を見抜いて自ら提案した可能性も十分考えられます。
加藤みきおの犯罪動機は?
もともとの動機は鈴を独占するため。
ただ犯罪を楽しいと発言しており、ただ単に鈴を独占したいとう動機では説明できない犯罪もある。
千夏の事件
自分が作ったパラコート(除草剤)入りのジュースを試してみたいという好奇心から犯罪を犯す。
明音の事件
明音が喧嘩で鈴を泣かせたため。
音臼小学校無差別毒殺
みきおは文吾が犯人になるという夢を見たためと発言しているが、本当のところは自分が好きな鈴が正義感のある文吾を尊敬しているとみきおに話したからでしょう。
文吾がいなくなれば自分が鈴の一番になれると考えたからだと思います。
2017年の慰霊祭でみきおが事件を起こそうとした動機は?
自分が望んだ鈴を手に入れることが出来なかったため。
みきおが望んだ鈴は小学校の頃のままの純粋な鈴でした。
しかし鈴は文吾が犯人に仕立て上げられたその日から犯罪者の子供として生きることになり安息の日は一日もありませんでした。
そんな鈴は名前や顔まで変えて生きるほかはなかった。
犯罪を犯してまで欲しかった鈴が変わってしまっていたことに虚しさを覚えてすべてをリセットしようとしたのです。
結局はみきお自身の身勝手な理由ということです。
感想
面白くて一気読みしてしまいました。
正直1回読んだだけではタイムスリップする前の世界と後の世界がごっちゃになったりしてよくわからずに何度か読んでようやく理解できました。
最後は佐野ファミリーが平和に暮らせてハッピーエンドなのですが、一方で心がタイムスリップしなければ死亡するはずもなかった金丸刑事のような人間もいてなかなか複雑なところです。
本作のタイトルにもなっている「テセウスの船」の意味も考えると面白いですね。
「テセウスの船」とはパラドックスのひとつである。
その昔
クレタ島から帰還した英雄・テセウスの船を後世に残すため修復作業が行われた
古くなって朽ちた部品を徐々に新しい部品に交換していくうちに当初の部品は全てなくなった
ここで矛盾が生じる・・・
この船は最初の船と同じといえるのか?
これが人間だったらどうだろうテセウスの船 第1巻
確かに最後の三つの世界はあらゆることが修復されていますが、最初の一つ目の世界とは全くの別物といえるでしょう。
未読の方はぜひ読んでみてください。