犯人当て小説。
作者のトラップを乗り越えて正解にたどり着けるか。
5つの話から構成されていますが、管理人は作者のトラップに気持ち良いくらいはまり一度も正解にたどりつけませんでした。
以下、それぞれ感想とネタバレを書いていきますので未読の方はご注意下さい。
どんどん橋、落ちた
かろうじてロープ1本つながっているどんどん橋を渡った先は行き止まり。
そこに取り残されたユキト。そのユキトに忍び寄り崖から突き落とした犯人は誰というもの。
アリバイを考えるとM村の住人が怪しいのだが、M村からどんどん橋へつながる唯一の道にはたまたま1人と1匹がおり、証言によると「この道は誰一人通っていないという」
一体誰がどのようにユキトを殺したのか。
正解は、M村の住人は人ではなく猿だったというもの。
猿だからかろうじてロープ1本つながっている橋も渡れるし、誰一人通っていないという証言とも矛盾がない。
完全に騙されましたね。
M村の住人が全員猿って。
確かに作中でM村の住人が人間と会話しているシーンはないし、M村の住人同士の会話は猿同士のコミュニケーションと考えればまぁ納得出来るかなというもの。
また人間の会話は「」で括られていますがM村の猿たちの会話は『』で括られているというヒントもありました。
管理人はこの手の本を読むときに犯人を本気で当てるというよりもどんな仕掛けが隠されていたのかを早く知りたくなってしまうタイプなので、その意味では意表をつかれる仕掛けで面白かったです。
ぼうぼう森、燃えた
どんどん橋、燃えたと同じように今回も動物達が登場します。
今回は猿ではなく犬ですが。
※今回は最初から犬であることが明示されています。
D団(犬達の集団)とH村(人間達の村)が登場します。
事件はD団のボス犬ロスが何者かに殺害されたというもの。
細かいシチュエーションは書くと長くなるので省きますが、今回の事件は色を識別出来たものが犯人という前提なので、色を識別できない犬、つまりD団のメンバーは犯人(犯犬?)ではありえないのですが・・・
<回答>
D団のメンバータケマルが犯人。
タケマルは犬ではなくて人間だった。
D団に所属しているので犬だと先入観を植え付けられていたが、タケマルは赤子の頃にD団のメンバーがH村から連れ去って自分たちの子供として育てたれっきとした人間だったのだ。
犬でないため色の識別は可能で、今回の事件を起こすことが出来た。
どんどん橋、落ちたのトリックを逆手にとったクイズでした。
どんどん橋、落ちた⇒人間と思わせて実は猿だった
ぼうぼう森、燃えた⇒犬と思わせて実は人間だった
フェラーリは見ていた
ちょっと書き表すのが難しいのですが、「フェラーリ」はみんなが思い浮かべる「車」の「フェラーリ」ではなくて「馬」の名前が「フェラーリ」だったというもの。
馬のフェラーリの小屋は犯行現場に続く道にある。
フェラーリは人見知りのため見知らぬ人が通ったら、必ず鳴いていたはず。
よって犯人はフェラーリと顔見知りである、フェラーリの前の飼い主鈴木さん。
というものでした。
これにて事件は一件落着。と思いきや真相は全く無関係の少年Aが犯人という落ち。
伊園家の崩壊
作家の井坂氏から持ち込まれた難事件。
舞台は現実と別世界の話。
登場人物は伊園民平(いぞのたみへい)、常(つね)、福田松夫(フクダマツオ)、笹枝(ササエ)、樽夫(タルオ)、伊園和男(カズオ)、若菜(ワカナ)等が登場し、どう考えてもあの一家を連想させるお話。
<事件とその真相>
①密室での笹枝の死
⇒借金苦に苦しんでいた伊園家を自らの保険金で救うため、他殺に見せかけて自殺した。
②飼い猫タケマルの死の真相
⇒事故により両足が義足となっていた若菜。自らの将来に絶望していたところ笹枝の死が発生し自殺を決意。
自殺に使用する毒物を試すために実験台として飼い猫のタケマルを毒殺した。
③若菜の死の真相
⇒両足を失ったこと、笹枝の死に希望を失い自殺。
ちょっとあの一家を想像すると後味が悪いというか悲しくなる話でした。
意外な犯人
ドラマ映像の中で次々と行われる殺人事件の犯人は誰かというもの。
出演者には完全にアリバイがある。
よって消去法で犯人はカメラマン。
更にカメラマンの正体が作家綾辻行人であるというおまけ付き。
U君の正体
本作品には綾辻行人本人が登場します。
その綾辻行人に「どんどん橋、落ちた」、「ぼうぼう森、落ちた」、「意外な犯人」の犯人当てクイズを持ち込んだU君という謎の青年がいる。
作中では最後までU君の招待は明示されていないが、自作ガイドにてU君の正体は「若いころの綾辻行人本人」であることが明かされている。
まとめ
意表をつかれるものばかりで面白かったです。
管理人は全てひっかりました。
本気で当てようと思えば一応当てられるようにはできていると思うのですが、ちゃんと回答出来る人がどれくらいいるのだろう。