残り全部バケーション|岡田の生死と「食べ歩き日記」との関連を考察

小説

伊坂幸太郎さんの人気小説「残り全部バケーション」の最大の謎である岡田の生死と「食べ歩き日記」との関連について考察します。

当たり屋、強請りはお手のもの。あくどい仕事で生計を立てる岡田と溝口。ある日、岡田が先輩の溝口に足を洗いたいと打ち明けたところ、条件として“適当な携帯電話の相手と友達になること”を提示される。デタラメな番号で繋がった相手は離婚寸前の男。かくして岡田は解散間際の一家と共にドライブをすることに――。その出会いは偶然か、必然か。裏切りと友情で結ばれる裏稼業コンビの物語。

残り全部バケーションより

本作では様々な謎が作中で登場していますが、その中でも最大の謎は「岡田」のその後でしょう。

溝口とともに毒島のもとを抜けた岡田。

二人が独立したことに腹を立てた(とされる)毒島は組織のメンバーを使って二人の行方を捜します。

毒島が怒っていることを知った溝口は独立は全て岡田の計画であり自分は関係ないのだと岡田に罪を擦り付けます。

それをそのまま信じたかどうかはわかりませんが毒島は溝口ではなく岡田に責任を取らせます。

そしてその後岡田の姿を見たものはいなくなります。

 

溝口は岡田に罪を擦り付けて助かったものの、そのことをとても後悔します。

なんだかんだで溝口は岡田のことをとても気に入っていました。

だから岡田に罪を擦り付けた自分を許せないという気持ちと実際に岡田を始末した毒島に対する恨みの気持ちが芽生えたわけです。

 

再び毒島の傘下に戻った溝口はひそかに復讐の機会を狙い続けていました。

普段の溝口は行き当たりばったりの行動が目立ちますが、今回の復讐は必ず成功させるべく知恵を絞ります。

そしてその結果が実り溝口は無防備な毒島に銃を突きつけることに成功します。

毒島にこんなことをする理由を聞かれた溝口は、岡田の復讐であることが告げます。

するとあろうことか毒島はなんと岡田は生きていると言うのでした。

岡田は生きているのか?

前置きが長くなりましたがいよいよ本題に入りたいと思います。

溝口に追い詰められた毒島は「岡田が生きているとしたら、どうする」と発言します。

溝口は岡田が生きていることは微塵も考えていなかったため動揺します。

しかし万が一本当に岡田が生きているのであれば、毒島に復讐する理由がなくなるのも事実です。

そもそも毒島は溝口と岡田が独立したことに対してそれほど怒っていなかったと言っています。

ただ組織のリーダーとしてちゃんとけじめをつける必要があった手前、毒島は岡田に「二度と姿を見せないで、どこかで暮らすんだったら、大目に見る。」と提案したというのです。

さらに毒島は溝口に教えた「食べ歩き日記」のブログを更新しているのは岡田なのだといいます。

果たしてこの毒島の発言は本当なのか?

「食べ歩き日記」を更新しているのは本当に岡田なのか?

詳しく見ていきます。

「食べ歩き日記」を更新しているのは岡田なのか?

毒島は岡田は生きており「食べ歩き日記」の更新をしていると言いますが果たしてそれは本当でしょうか。

「食べ歩き日記」を更新している候補として考えられるのは作中において毒島が言う「岡田」か第一章に登場した「早坂沙希(ハヤサカサキ)」のどちらかしかいません。

では果たしてこの二人の内、どちらなのでしょうか。

ポイントになるのは「食べ歩き日記」が女性の文章で書かれていることです。

それは「食べ歩き日記」を愛読している溝口が「サキ」を女性だと思っていることからも明らかです。

もし食べ歩き日記の更新を岡田がしているとするとなぜ女性の文体で文章を書いたのか疑問が残ります。

理由もなく女性の文章で書くことはなくもないでしょうが、岡田の性格を考えるとそんな面倒なことをするようには思えません。

一つ理由として考えられるのは自分の身元を隠すためですが、一番隠さなければならない毒島にメールで伝えている以上、他に隠す必要性も感じません。
そもそも毒島の話を信用するのであれば毒島と岡田は和解しているので隠す必要がないことになります。

 

このことから「食べ歩き日記」の更新をしているのは第一章に登場する「早坂沙希」だと考えます。

「早坂沙希」ならハンドルネームの「サキ」も本名だから違和感はありませんし、沙希は女性のため当然文章も女性のものになります。

 

ただ「食べ歩き日記」の更新を「早坂沙希」がしているとすると下記2つの疑問が出てきます。

①岡田からメール連絡が来たという毒島の話は嘘だったのか(結局岡田は死んでいるのか)?

②第一章で岡田が菓子類の美味しさに感動した描写の回収はどうなるか?

まず①から見ていきます。

毒島は過去にも無防備な状態で敵に囲まれた際に無駄な会話で時間を引き延ばして、敵の注意をそらすことで危機を切り抜けたことがあります。

だから今回も溝口に銃を向けられた毒島が単に時間を稼ぐために、溝口の気を引くことが出来る岡田の話をしたと考えることもできますが、管理人は違うと思います。

なぜなら毒島は今回の復讐劇がある前に「食べ歩き日記」の存在を溝口に教えているからです。

もちろんただ単に毒島が本当に甘い物が好きで溝口に自分が気に入っている「食べ歩き日記」の存在を教えていて、土壇場でそのことを岡田と結び付けて溝口の気を引いた可能性も0ではありません。
ただ毒島と溝口の立場を考えるとそんな意味のない話をする間柄とも思えないので、本当に岡田は生存していて「食べ歩き日記」のことを毒島に伝えたのでしょう。

岡田が毒島に「食べ歩き日記」のことを伝えたのだとすると、なぜわざわざ岡田は「早坂沙希」が更新をしている「食べ歩き日記」のことを教えたのか疑問が残ります。

その疑問は第一章の後、岡田と早坂沙希が仲良くなり二人でスイーツ食べ歩きをするような関係になったからだと考えてみると伊坂さんの作品らしくロマンがあるものになります。

つまり岡田は早坂沙希と一緒にスイーツ食べ歩きをしているものの実際に「食べ歩き日記」を更新しているのは「早坂沙希」だと考えると全て矛盾がなくなるのです。

そもそも毒島自身のセリフにも岡田のメールに「甘い物食ってます」と書いてあったと言ってはいるものの「食べ歩き日記」を更新しているとは言っていません。

ある時、岡田が俺のところにメールを送ってきた。
おかげで無事に生きて、甘い物を食ってます、ってな。
サキってのは、どこかで知り合った女の名前じゃないのか。

残り全部バケーション P290 毒島のセリフ

恐らく岡田は自分がいまどんなことをしているかということを毒島に伝えるために、参考として一緒に食べ歩きをしている「早坂沙希」の「食べ歩き日記」のアドレスを送ったのではないでしょうか。
そしてその結果、毒島は岡田が「食べ歩き日記」の更新をしていると勘違いしたのではないでしょうか?

 

長くなりましたが結論をまとめるとこういうことになります。

岡田は毒島の言う通り生存しているが、「食べ歩き日記」の更新を行っているのは「早坂沙希」である。

管理人としてはこれで非常にすっきりしますがいかがでしょうか。

余談ですが第一章で毒島を裏切った男が切り刻まれたという話がありますよね。

このことを考えると岡田や溝口を許していることに少し違和感もあるのですが、ここは毒島自身が言っている溝口のこと(おそらくは岡田も)を気に入っているという言葉を信用するしかなさそうです。

そもそも二人のことを本気で怒っていたら岡田だけでなく溝口も始末されているはずですしね。

だってどう考えても独立の主犯は溝口ですから。

 

何回読んでも楽しませてくれる「残り全部バケーション」に感謝です。

 

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