【小説】罪人の選択|貴志祐介最新作のネタバレ感想

小説

貴志祐介さんの最新作「罪人の選択」のネタバレ感想記事です。

本作は短編小説になっていて、基本的に作品ごとの関連はありません。

しかし短編だからといってつまらないことは全くなく、特にタイトルにもなっている「罪人の選択」はかなり楽しめました。

ネタバレ感想

短編は全部で4つあり、どの話も貴志祐介さんらしさ全開の仕上がりです。

 

以降はネタバレしていきますので未読の方はご留意ください。

 

 

 

 

夜の記憶(Memory of the Night)

aパートとbパートの2つの視点で話します進みます。

 

aパート
→水生生物の「彼」が絶滅する同族を救おうとする話。
bパート
→2096年に太陽系を脱出する前にバカンスを過ごす「三島暁(29歳)」と「三島織女(22歳)」の夫婦の話。

 

ポイントは水生生物である「彼」=「三島暁」であるという点。

異星人の侵略により地球から追放されることとなった人類。

異星人は人類はただ滅ぼすのではなく心理的適性を持つ人間の記憶を「共生チップ」に詰め込み、遠い惑星に送ることにした。

送られる対象となる惑星は文明が発達しておらず、そしてある種族が何らかの困難に直面しているという惑星であった。

つまりbパートの「三島暁」の記憶をダウンロードされて遠い惑星に送られたのがaパートの「彼」ということになる。

水生生物の姿にされた「彼」であったが今でも地球で織女と過ごした最後の夜を思い出すのであった。

 

 

未来で異星人に侵略された地球人が記憶だけチップに詰め込まれ、遠い惑星に飛ばされて絶滅しそうな種族を救うという話でした。

記憶を詰め込まれるということは元の器である肉体の方はどうなるのでしょうか。

はっきりと書かれてはいませんが、おそらく肉体の方は異星人に滅ぼされてしまうのでしょうね。

ちょっとぞっとしますが貴志祐介さんらしい話でした。

呪文(Incantations)

こちらも未来の話。

銀河を支配する巨大な星間企業ヤハウエから植民惑星の調査を依頼された古代日本文化の専門家である金城。

調査対象となったのは「まほろば」と呼ばれる植民惑星。

「まほろば」はかつて地球から来た移民たちが何代にもわたり過酷な労働をしながら生活をしてきた星である。

この星では「諸悪根源神信仰」があり、この信仰が銀河の脅威になるのではないかとヤハウエが懸念し専門家である金城を派遣したのであった。

「諸悪根源神信仰」とは本来敬うはずの神を逆に呪うという反宗教的なものである。

なぜヤハウエが「諸悪根源神信仰」を危険視するかというと過去にこの信仰があった植民惑星は集団自殺により滅亡しているからであった。

しかしなぜ集団自殺が起きているのかはわからなかったため金城は調査を依頼されたのだった。

まず金城はなぜ「まぼろば」の人たちが神を呪うのかを村人にヒヤリングした。

その結果「まぼろば」では移民直後から数々の不運な出来事が起こり、次第に神を信仰できなくなり神を呪うようになったのであった。

そして不思議なことに神を呪うと不運な出来事は一定期間はおさまったのである。

神を呪う効果を実感した村人たちは「諸悪根源神信仰」にのめりこんでいった。

 

金城は調査により「諸悪根源神信仰」の内容は徐々に解明していったが、星間企業であるヤハウエは「まぼろば」に石打ちをすること決定する。

石打ちは小惑星を植民惑星に落とすことで、石打ちを行われれば「まぼろば」は消滅することになる。

石打ちを行うということはヤハウエは「まぼろば」の「諸悪根源神信仰」を余程危険視していることになる。

金城は調査により親しくなっていた「タミ」を救うためにも何とか「まぼろば」の「諸悪根源神信仰」は危険でないことを証明しようと奔走する。

「まぼろば」の村人は「まぼろば」の環境に適応するために移民時に遺伝子操作を行われており、全員魔女のような風貌をしていたが、遺伝子操作の影響を取り除いたタミの顔はとても美しいものであった。

金城の努力もむなしく「まぼろば」では農作物が害虫にやられてしまう。

更に頼みの綱であった食糧庫も害虫にやられることで村人はもうこれまでと生きることを諦める。

しかし最後の抵抗で村人全員で集まり神を呪うことにする。

村人の呪いの力はすさまじくあたりの物が破壊されていった。

まぼろばの村人には念動力の力があったのだ。

しかし、最終的に呪っていた神の力により落雷が落ちて村人は死亡してしまう。

神の顔は子豚のような顔をしていた。

 

金城は死亡してしまったタミを宇宙船に乗せて帰還しようとする。

金城はタミを現代の医療で蘇らせて、更に遺伝子操作の影響を取り除いて本来の顔に戻してあげようとしていた。

金城としては「まぼろば」を救えなかったせめてもの罪滅ぼしのつもりであったが、タミの人柄や本来の美しい顔に惹かれている面も多分にあったであろう。

金城は帰りの船でなぜ「まぼろば」は滅びたのか考えた。

色々調べていくうちに興味深い文献を見つける。

それは今より更に昔に滅びた「アヴァロン」という植民惑星についての文献だった。

「アヴァロン」も「まぼろば」と同じく「諸悪根源神信仰」がある植民惑星であった。

「アヴァロン」でも不運な出来事が起こり、最終的には大災害により全員が死亡してしまう。

「アヴァロン」で呪いの対象とされていた神は魔女のような顔をしていたと記されていた。

 

つまり「まぼろば」と「アヴァロン」は時空を超えてつながっており、「まぼろば」の村人が神を呪うと「アヴァロン」に災害が起きて、「アヴァロン」の村人が神を呪うと「まぼろば」に災害が起きていたのであった。
※どちらの星の村人も念動力の力を持っていた。

時空を超えた呪いの力は結局どちらの星の民も消滅させてしまったのである。

 

罪人の選択(The Sinner`s Choice)

1946年8月21日と1964年10月10日の過去と未来の2つの視点で書かれている。

<1946年8月21日>
処刑人:佐久間茂
罪人 :磯部武雄
立会人:浅井正太郎
場所 :防空壕の中
※3人は幼馴染

足が悪く徴兵を免れた磯部武雄は佐久間茂の妻淑子と不倫関係になっていた。
戦争から帰って来た佐久間にそのことがばれた磯部。
幼馴染の浅井の立会いのもと、磯部は罪人の選択をさせられることになる。

その選択は「酒」と「缶詰」のどちらかを選ぶというものである。
「酒」を選択したなら最後まで飲みほし、「缶詰」を選択したなら最後まで食べきるということだ。
ただし、どちらかには毒が入っているので誤った方を選べば死ぬことになる。

佐久間茂は妻と不倫関係にあった磯部に当然憤りを感じていたが、一方で佐久間茂が戦争に行っている間に、食料がなく困っている佐久間家を助けてくれたのが磯部であることも事実であるため、助かる道も残したのだ。

佐久間茂が磯部に与えたヒントは一つ。

正解は、おまえへの感謝。毒入りの方は、おまえに対する憤りだ

罪人の選択 P1717

磯部は考えた末に「焼酎」を選んだ。

しかし焼酎には佐久間茂が入れた青酸ナトリウムが入っており死亡した。

佐久間茂のヒントは自分がいない間に食料をくれたことの感謝を「缶詰」で表現し、磯部が戦争中に密醸造したカストリ焼酎を売りさばき荒稼ぎしたことに対する怒りを「焼酎」で表していたのだ。

つまり怒りを表した焼酎には毒が入っているということになる。

素直に考えれば「缶詰」を選びそうなところだが罪人である磯部は悪魔に魅入られたように毒が入っている「焼酎」を選んでしまったのだった。

 

<1964年10月10日>
処刑人:佐久間満子(磯部の実の娘だが磯部の死後に佐久間に引き取られた)
罪人 :黒田正雪(浅井正太郎の私生児)
立会人:なし
場所 :防空壕の中

佐久間満子の妹の佐久間史子が、黒田正雪に弄ばれて自殺をした。
佐久間満子はかわいがっていた妹の復讐に罪人の選択をさせる。

18年前と同様に選ぶのは「酒」か「缶詰」のどちらか。
場所も同じ防空壕。

満子が黒田に与えたヒントは下記。

十八年は、古い恨みをぬぐい去るにも、新たな怨念を生み出すにも、充分な年月なのよ。

罪人の選択 P1924

黒田は満子からこの防空壕で18年前に磯部が死亡したことを聞かされていた。
※実際防空壕には磯部の死体が放置されたままであった。

黒田は満子の許可を得て磯部の死体を調べる。

磯部がどちらを選んで死亡したかがわかれば生き延びるヒントになると考えたからだ。

黒田は磯部の死体の周辺にコップの破片が飛び散っていたのを見つける。

そのことから黒田は磯部が「焼酎」を選んで死亡したことを確信した。

よって毒が入っていないのは「缶詰」だと考えて缶詰を選択。

 

黒田は生き延びたかに思えたが。。

この18年の間に焼酎に入っていた青酸ナトリウムは二酸化炭素と化合して重曹に変わっていた。

一方18年前に無毒であった缶詰はボツリヌス菌が長い時を経て繁殖していたのであった。

満子が出したヒントは18年前に毒が入っていた焼酎が無毒になり、無毒だった缶詰が有毒化していることを表していたのであった。

黒田はボツリヌス菌により死亡した。

赤い雨(Red Rain)

チミドロという遺伝子操作により生み出された生物によって支配された地球の話。

チミドロに支配された地球では赤い雨が降っており、その雨にうたれた人間は「RAIN」という病気にかかり通常よりずっと早く死んでしまう。

地球ではドームと呼ばれる施設でRAINの脅威にさらされず暮らしている富裕層と、ドームの外でRAINの脅威にさらされながら暮らしている貧しい人々が存在する。

橘瑞樹はドームでRAINの研究をする医師だがもともとはドーム外の出身であった。

統一学力テストで優秀な成績をおさめたためドームで暮らすことが許されたのだ。

しかし瑞樹は父親をドーム外に残して自分だけがドームで暮らすことに罪悪感を感じていた。

 

ある日瑞樹はRAINの研究のためにドーム外でRAINにより死亡した人の遺体をドームにこっそり運ぶことを決意する。

しかしRAINに感染した遺体をドームに運ぶことなど許されることではない。

そのことがばれた瑞樹はドームの裁判にかけられる。

本来は極刑となる大罪であったが、恋人であり弁護人を引き受けてくれた光一のおかげでドームからの追放だけで済んだ。

光一は瑞樹をドームに送り出す際に自分も瑞樹と一緒にドーム外で暮らすと主張する。

しかし瑞樹はその光一の主張を全力で拒否する。

瑞樹はいつかRAINの治療法が見つかった時に必ずドーム内の協力者が必要になるからその時のために光一にはドームにとどまっていてほしいと伝えたのだ。

光一はなおも食い下がるが瑞樹は折れなかった。

瑞樹のお腹に光一の子供がいたので(光一はそのことを知らない)、その子供のためにも光一は生きていてほしかったのであろう。

二人はドームとドーム外でこれからもRAINの研究を続けていくことになる。

 

感想

久しぶりの貴志祐介さんの小説でした。

SFなのですが何とも言えないホラー要素がある貴志祐介さんらしい作品です。

管理人的に一番ミステリーとして面白かったのはタイトルにもなっている「罪人の選択」。ストーリーとして好きなのは最後に希望が持てる「赤い雨」ですかね。

何にしても面白いので未読の方はぜひ読んでみてください。

 

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