ネタバレ感想|七回死んだ男『西澤保彦』

衝撃を受ける面白さ。

個人的小説ランキングトップ5に入る傑作

とりあえず読んでほしい一冊です。

この本を読んだのをきっかけに小説の世界にのめり込みました。

 

以下ネタバレ感想を書いていきますので未読の方はご注意下さい。

 

まず設定が面白い

主人公は高校生の久太郎(ヒサタロウ)ことキュータロウ。

 

一見何の変わりもない高校生ですが、キュータロウはとんでもない特異体質の持ち主です。

 

その特異体質の名は「反復落とし穴」。

反復落とし穴が始まると同じ1日が何度も繰り返されてしまうのです。

 

反復落とし穴のルール(箇条書き)

①反復落とし穴は突如始まる。キュータロウには反復落とし穴が始まる日をコントロールできない。だから能力ではなく体質。

 

②反復落とし穴は9回繰り返される。つまりキュータロウは同じ日を9周体験する。

 

③反復落とし穴はキュータロウ以外の人間は認識できない。他の人には普通の1日と変わらない

 

④反復落とし穴は9周目の出来事が決定版となる。つまり1周目~8周目の出来事はその後の日に引き継がれず9周目の出来事が翌日に引き継がれる。

⑤反復落とし穴の2周目以降で違う行動をとれるのはキュータロウだけ。他の人は1周目と同じ行動を繰り返す。つまり1周目と違う現象が発生したらそれは全てキュータロウの行動に起因する。

 

事件が起きる

キュータロウが参加した一族の新年会で反復落とし穴が始まってしまう。

 

ちなみにこの新年会は祖父が経営する会社の後継者の決定にも絡んでくる重要なもの。

 

1周目は祖父の酒盛りにつきあい二日酔いになってしまったが平和に過ぎ去っていった。

 

しかし2週目に、二日酔いになるのを避けるため祖父を避けていたらなんと祖父が屋根裏部屋で酒盛りをしているところを殺害されてしまった。

 

1周目に生きていた祖父が2周目は死んでしまったのは反復落とし穴を認識している自分の責任以外ありえない。

 

キュータロウは祖父を死なせないため様々な策を講じるが・・・

 

キュータロウ目線での9周をまとめると下記のようになる。

 

キュータロウ目線の9周

1月2日:1周目

祖父の酒盛りに付き合う。キュータロウは重度の二日酔いになるものの祖父は無事生きている。

 

1月2日:2周目

二日酔いになるのを避けるため、祖父から逃げる。

祖父がルナ姉さんと富士高兄さんに殺害される。

 

1月2日:3周目

2周目の犯人である。ルナ姉さんと富士高兄さんを足止めするが、

その間に舞姉さんに祖父が殺害される。

 

1月2日:4周目

2周目と3周目の犯人である。ルナ、富士高、舞の3人を足止めする。

しかし世史夫兄さんに祖父が殺害される。

 

1月2日:5周目

2周目~4周目の犯人である、ルナ、富士高、舞、世史夫の4人を全員足止めする。

今度こそはと思ったが、母の加実寿が祖父を殺害してしまう。

 

1月2日:6周目

誰かを足止めしても誰かが殺害してしまうと考えたキュータロウは今度は親族一同を集めて足止めすることに成功する。

しかし今度は秘書の槌谷が祖父を殺害してしまう。

 

1月2日:7周目

親族だけ足止めをしては駄目だと考えたキュータロウ。

今度は屋敷にいる人全員を集めて、見張っておこうと決意する。

全員を集めるのには成功したが祖父は階段から足を滑らせて事故死してしまう。

 

1月2日:8周目

祖父を死なせないためには1周目と同様に祖父の酒盛りに付き合うしかないと悟ったキュータロウ。

祖父の酒盛りに付き合うがなぜかルナと富士高も乱入することに。

 

そして話をしている最中に祖父は酒の飲みすぎによる脳溢血で死亡してしまう。

 

 

1月2日:9周目

今まで祖父が死んでいたのは酒の飲み過ぎによる脳溢血だということがようやくわかったキュータロウ。

一見殺害にされているように見えたのは、祖父の死体を発見したメンバーが友理さん(現在の祖父の会社の後継者候補)に罪を着せるために偽装工作をしたからであった。

キュータロウは策を講じて祖父に酒を飲まないよう約束を取り付ける。

そして祖父は無事生きて翌日を迎える。

 

 

事件の真相

キュータロウ目線からの9周は上記のとおり。

しかし、事件の真相はキュータロウの勘違いとは・・・・・

 

実は反復落とし穴が起きたのは1月3日だった

キュータロウ最大の勘違い。

反復落とし穴が1月2日ではなく1月3日だった。

 

1月2日にキュータロウは祖父の酒盛りに付き合い酔ったまま自宅に帰るために車に乗り、すぐ寝てしまった。

しかしキュータロウが寝た後すぐに祖父に呼び止められてもう一泊するように勧められてもう一泊していた。

 

キュータロウは自宅に帰ったと思っていたのに祖父の屋敷の屋根裏部屋にいたため反復落とし穴が起きてたと勘違いしてしまった。

更にキュータロウの勘違いに拍車をかけたのが1月3日に実際に反復落とし穴が始まったこと。

 

これによりキュータロウは1月2日の反復落とし穴が始まったと勘違いしたのである。

 

しかしそうするとキュータロウの感覚よりもう一周多くあるため異変に気付くはずだが、1月2日から数えてきっかり9周で反復落とし穴は終わっていた。

その原因はキュータロウが反復落とし穴が始まった2周目に屋根裏部屋の階段から足を滑らせて死んでしまっていたため(祖父と同じように)。

そのためキュータロウはその周を認識できずつじつまがあってしまったのである。

時間軸をまとめると下記のようになる。

キュータロウ目線の時間軸客観的目線の時間軸
1月2日(1周目)1月2日
1月2日(2周目)1月3日(1周目)
起きてすぐ死んでいたため認識できない1日1月3日(2周目)キュータロウ1日死亡
1月2日(3周目)1月3日(3周目)
1月2日(4周目)1月3日(4周目)
1月2日(5周目)1月3日(5周目)
1月2日(6周目)1月3日(6周目)
1月2日(7周目)1月3日(7周目)
1月2日(8周目)1月3日(8周目)
1月2日(9周目)1月3日(9周目)
1月3日1月4日

 

キュータロウは自分が1月2日の1周目と違う行動を2周目でとったため祖父が死んでしまったと勘違いしていました。

しかし実際は祖父が死んだのは1月3日の1周目だったので、本当は祖父は1月3日に死ぬはずで、キュータロウの反復落とし穴が始まったため助けることが出来たというのが真実でした。

 

まとめ

最初に読んだ感想はこんなに面白い本があるのかというものでした。

 

「七回死んだ男」というタイトルからなんとなく重苦しいものを想像していましたが、主人公のキュータロウのどこか達観したスタンスと作者のポップな文章。

更にはキャラの濃い親族達によりとても楽しめるものです。

 

「反復落とし穴」というのは非常に良く考えられた設定で、それをとても上手に扱っています。

 

もし読んでいないという方がいれば絶対に読んで頂きたい1冊です。

 

珍しく長文の感想を書いた管理人でした。

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