【筒井康隆】旅のラゴス|最高の1冊に挙げられる理由を考察する

色んなサイトやAmazonのレビューで最高の1冊と評価を得ている旅のラゴスをついに読んでみました。

読んでみた簡単な感想となぜ様々な人から最高の1冊と呼ばれるのかについて考えてみました。

あらすじ
北から南へ、そして南から北へ。突然高度な文明を失った代償として、人びとが超能力を獲得しだした「この世界」で、ひたすら旅を続ける男ラゴス。集団転移、壁抜けなどの体験を繰り返し、二度も奴隷の身に落とされながら、生涯をかけて旅をするラゴスの目的は何か?異空間と異時間がクロスする不思議な物語世界に人間の一生と文明の消長をかっちりと構築した爽快な連作長編。

感想

実は管理人個人としてはそれほどぴったりとはまる本ではありませんでした。しかしそれだけで感想が終わってはつまらないのでなぜ自分にぴったりはまらなかったのかを少し考えてみました。

それは恐らくこの作品には答えどころか問いするないからだと思います。

これだけだと何のことやらだと思うのでもう少し細かく書きます。

例えば通常のミステリー小説であれば大きな謎や小さな謎がストーリーの中にちりばめられていて、その謎の大部分が終盤で明かされることが多いです。

例えば大きな謎は犯人の正体で小さな謎は犯人があの時にとった行動の意味や、動機といったところになるのでしょうか。このような謎は終盤に明らかになることがほとんどです。

謎がすっきり明かされることでミステリーを読んで満足感が得られますし、明かされなかった謎があったとしても作品にヒントがあるので読者が色々と考えて正解かはともかく自分なりの考えをもつことが出来ます。

しかし本作ははじまりから終わりまでラゴスが淡々と旅をしているだけであり物語のキーとなる謎がないのです。

本当に旅をしなければ生きられないのではというように奴隷になっても王様になっても時が経てばラゴスはまた旅を続けます。

更にラゴス自身がどこか達観した性格であるため感情移入しにくいこともあり余計物語が淡々と進んで見えるのかもしれません。

物語のキーとなる謎がないことと、ラゴスの達観した性格により、日頃からミステリー小説に慣れている管理人は本作にもキーとなる謎と答えがあるはずと思いこんでしまったのが肩透かしを食らった理由かもしれません。

前述のとおり物語のキーとなる謎はありません。なのでこの本を好きな方たちはラゴスの生き様に何かを感じ取って、憧れだったり、共感だったり、色々な思いを抱き作品にのめり込んでいったのではないでしょうか。

例えばラゴスは「人間はただその一生のうち、自分に最も適していて最もやりたいと思うことに可能な限りの時間を充てさえすればそれでいい筈だ。」と考えておりこのような考えを実現出来たらいいなという人は多いのはないでしょうか。

つまり本作はラゴスの生き様を見て、その生き様に読者が何かを感じて、自分の生き様を再考できる本なのではないでしょうか。

そのような視点で考えれば多くの方が最高の一冊に挙げる理由も分かる気がします。

普段からほとんどミステリーものしか読まない管理人からするとあまりにもあっさり終わって肩透かしをくらいましたが、そういう本ではないことに気づけました。

ちなみにキーとなる謎がないと述べましたが何点かの小さな謎はありましたのでそちらについては管理人なりの見解を書きたいと思います。

ドネルは誰か

これはたまご道の章でラゴスが出会ったタリアの息子でしょう。

理由は以下の点です。

南で何か悪さをしでかした。
→タリアの話では息子は盗賊団の首領をしていた。

ラゴスとドネルは同じ年くらい
→タリアの話ではラゴスと息子は同じ年くらい

ラゴスにとってドネルは見覚えのある顔
→ラゴスは昔盗賊団に襲われたことがあるのでその時の顔を何となく覚えていた可能性がある。

先祖はだれか

はるか昔にこの世界にやってきた先祖は誰か。これは何のヒントもなかったと思うので管理人の勝手な推測ですが、未来の地球人だと思います。

地球が環境悪化によって住めなくなったため一部の人間がこの世界に宇宙船を使って移住してきたと考えるとつながりがあって面白く感じます。

ザムラはなぜラゴスと旅がしたかったのか

これは最後まで謎ですね。こじつけで理由を考えるならラゴスは後の町で出会ったタリアに「あんたは自分が正直でいい人間だということを周囲の人にまきちらす」というような発言をされていますので、ザムラもラゴスをいいやつだと感じ取って単純に一緒に旅をしたくなったというところでしょうか。

まとめ

管理人の最高の1冊にはなりませんでしたが、読後に色々と考えたり思い返したりすることでじわじわ面白さが伝わってくるような、そんな不思議な魅力を持った1冊でした。

未読の方は読んでみる価値がある本だと思います。

ただしミステリー小説のように読んではいけません。ラゴスの生き様に何かを感じましょう。

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