【小説】名も無き世界のエンドロール|ラストの「シロタ」の意味とネタバレ解説

面白かったです。面白かったのですが、結末は購入時の予想と異なるものでした。

今回の記事ではネタバレ解説と「ラスト」の解釈を考えてみたいと思います。

あらすじ
ドッキリを仕掛けるのが生き甲斐のマコトと、それに引っかかってばかりの俺は、小学校時代からの腐れ縁だ。30歳になり、社長になった「ドッキリスト」のマコトは、「ビビリスト」の俺を巻き込んで、史上最大の「プロポーズ大作戦」を決行すると言い出した―。一日あれば、世界は変わる。男たちの命がけの情熱は、彼女に届くのか?

ネタバレ解説

肝となる部分のネタバレをしていきますので、未読の方は注意して下さい。

プロポーズ大作戦の意味

金持ちの娘で我儘なリサへのプロポーズではなくて、かつて事故で死んだ恋人ヨッチへのプロポーズでした。

マコトは交際していたヨッチにクリスマスイブの日にプロポーズをする予定でした。しかし無免許のリサが運転する車に轢かれてヨッチは死んでしまったのです。

主人公のキダとマコトにとって幼馴染のヨッチの死は相当なショックでした。しかもなぜかヨッチの事件は意図的に誰かに隠ぺいされています。

そんなある日、車を修理する会社に勤めているキダとマコトのもとに壊れた車に乗ったリサが現れます。

マコトはリサと話をし、調べる内にリサがヨッチを轢いた犯人だと判断します。

そしてリサに近づくためリサと交際することを目指します。

リサは金持ちの娘なのでリサと付き合うには自身も金持ちになる必要があると判断しかなり無茶の方法で金を集めて、最終的にワインの会社の社長になります。

そうして目論見どおりリサと交際することに成功したマコト。

そうして色々と調べるうちに、権力を持つリサの父親がリサがヨッチを轢いた事故を闇に葬りさったことが判明します。

マコトは集大成にプロポーズ大作戦を親友のキダの協力のもと計画します。

このプロポーズ大作戦の目的はリサにヨッチの事故のことを認めさせてヨッチのことを思い出させること、そしてその映像を中継して公開することで世間にもヨッチの存在を認めさせること、さらに爆弾を爆発させマコト自らとリサを殺害することにあります。

これはヨッチの過去の発言に影響を受けたものです。ヨッチは人から忘れ去られることを何よりも恐れていたので、リサと世間にヨッチの存在を思い出させたいということと、ヨッチはひき逃げ犯なんか爆弾で吹き飛ばしてやりたいと発言をしていたのでそれに従った形になるのでしょう。

なお、マコト自信が死ぬ理由はヨッチの発言とは関係がなく、自分も死んで亡くなったヨッチにあの世でプロポーズをするためなのでした。これぞプロポーズ大作戦。

ラストのひき逃げの意味-轢かれた男シロタとは

ラストで自身の名前を捨てた主人公のキダ。

かつて親友であるマコトはリサに近づくために本当の「澤田マコト」という名前を捨てて、他人から買った「小野瀬マコト」を名乗るようになりました。

そしてマコトの死後、キダはめぐりめぐって購入した親友の本名「澤田マコト」の名前を名乗るようになります。

そんな中、警察から「シロタ」という男がひき逃げの被害者になって死亡したことを教えられます。

この「シロタ」というのは「城田」という字を書くと思うのですが、主人公であるキダも「城田」と書いてキダと読みます。

警察の人は被害者の名前の「城田」という字を見て「シロタ」と勘違いしたものと思われます。

さてこの「シロタ」はいったい誰なのでしょうか。

明確な答えはありませんが2つのパターンを考察してみます。

①キダの身分を購入した人物がひき逃げの被害者なった

これが一番終わりとしてはしっくり来ると思います。このひき逃げの事故によりキダの身分を買った人は死亡するのでキダという人物は世間から消えることになります。

最後に残されたのは親友である「澤田マコト」の身分とキダ自身の身体のみ。

ヨッチの死後二人三脚で生きてきた二人なので、二人で一人の人間を名乗れるというのはしっくるくる気がするのでした。

②本当にシロタという人物が轢かれた

現実だったらそんな偶然はないだろうということで、キダの身分を買った人物ではなく全く別人のシロタという人物が被害者になったという考えです。

現実だったらこれでしょうが、終わり方としてはしっくりきません。

管理人としてはやはり①のキダの身分を買った人物が被害者だったと考えるのがすっきり来ます。

まとめ

ハッピーエンドを期待していた管理人としては少し肩透かしを食らいましたが、最後まで楽しく読めました。

他の方も書いていますが「伊坂幸太郎」氏の作品に似ていると感じました。

一番似ていると感じたのは登場人物のセリフの言い回しです。「~じゃねえよ」という言い回しが多く出てきており、伊坂さんの作品にもこのような言い回しが多かったと思います。

ラストは賛否両論ありそうですが、管理人は先が気になり一気に読めました。未読の方はぜひ読んでみて下さい。

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