【ネタバレ解説】カラスの親指|細かな伏線が鮮やかに回収される傑作

ラットマンを読んで面白さを感じて以来、道尾さんの小説にはまっています。

今回はカラスの親指を読了したのでネタバレ感想記事です。

最後に一気に伏線が回収されて頭が整理されていないという方はぜひご一読下さい。

あらすじ
生に敗れ、詐欺を生業として生きる中年二人組。ある日、彼らの生活に一人の少女が舞い込む。やがて同居人は増え、5人と1匹に。「他人同士」の奇妙な生活が始まったが、残酷な過去は彼らを離さない。各々の人生を懸け、彼らが企てた大計画とは?息もつかせぬ驚愕の逆転劇、そして感動の結末。

ネタバレ解説

内容は全てネタバレが絡むので、未読の方はご注意下さい。

テツさんの正体は?

最後に明かされたテツさんの正体。生粋の詐欺師であり、まひろとやひろの実の父親。

今回の事件はすべてテツさんに仕組まれたもの。

なお、武沢がテツさんと出会ったのも、武沢がまひろと出会ったのも全てテツさんの計画によるもの。唯一の予定外は貫太郎のみ。

テツさんが事件を仕組んだ目的は?

テツさんは自分が詐欺師であることが原因で妻に離婚されてしまった。

またそのせいで妻は生活に困り自殺し、娘であるやひろとまひろはでたらめな生活を送っていると考えていた。更に当時借金取りをしていた武沢が自分の妻を自殺させてしまい激しい後悔を抱えているのもそもそもは自分の責任だと思っていた。

そんなテツさんはまひろとやひろ、そして武沢を今の生活から救うために一芝居うったのだった。

その結果まひろとやひろは普通の生活に戻ることが出来て武沢もヒグチの陰におびえることがない生活に戻れた。

テツさんは一芝居うつために劇団のメンバーに協力を依頼した。その依頼費用はかなりのものだったがテツさんは出所してビジネスで成功した元闇金組織のヒグチに詐欺を仕掛けて多額の金銭をだまし取っていたため支払うことが出来た。

テツさんはヒグチにきっちり落とし前をつけていたのであった。

武沢とテツさんが二人で組んでから詐欺が失敗知らずだった理由は?

武沢とテツさんが知り合って以来、二人で詐欺の計画を立てて全て成功を収めてきた。しかしそれはテツさんがヒグチから奪ったお金を詐欺の成果として武沢に見せていただけで実際は詐欺は働いていなかったのだ。

二人で詐欺を行う際に金銭の受け取り役はいつもテツさんだったため武沢は気づくことが出来なかった。

トサカは死んでしまったのか?

誰も傷つくことがなく終わったと思えるテツさんの計画。しかしまひろ達の飼い猫トサカが殺されてしまった件はどうなのか。

実は本当はトサカは殺されてなどいなく、死体と思われたのはテツさんがぬいぐるみやトマトを使って作った偽物だった。

本物のトサカは後日新しい生活を始めたまひろとやひろと貫太郎のもとへテツさんから届けられた。なおまひろ達はその猫がトサカだとは気づいていない。

感想

読んでる最中はハラハラドキドキでページをめくる手がとまりませんでしたが全てテツさんが仕組んだ芝居だったとは。。

全く気が付きませんでした。管理人はこういう作者が仕掛けたトラップにことごとく引っかかってしまうのですが、こういうのを途中で気付ける読者の方はいるのですかね?

道尾さんの作品は伏線がきれいに回収されるのが本当に好きです。読み終わった後にあれどうだったのみたいなやつがないのが心地よいんです。

ただそこは賛否両論あるところだと思っていて、読み終わった後に考察の余地がある謎が残っているのが好きな人も多いと思います。そこは好き好きですよね。

余談ですが東野さんの白夜行なんか色々と考える余地がありました。そういう作品も楽しいことは間違いないんですけどね。

とにかく何が言いたいかと言うと「カラスの親指」は満足出来る1冊でした。

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