【小説】火車|新城喬子の足取りと残された謎をネタバレ解説

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宮部みゆきさんの小説「火車」を読了したのでネタバレ感想記事です。

本作は文庫本にして700P近くありましたが長さを感じることは全くなく読めば読むほど引き込まれていきました。

今回の記事ではヒロイン?である新城喬子の足取りと残された謎を振り返ってみたいと思います。

あらすじ

休職中の刑事、本間俊介は遠縁の男性に頼まれて彼の婚約者、関根彰子の行方を捜すことになった。自らの意思で失踪、しかも徹底的に足取りを消して―なぜ彰子はそこまでして自分の存在を消さねばならなかったのか?いったい彼女は何者なのか?謎を解く鍵は、カード会社の犠牲ともいうべき自己破産者の凄惨な人生に隠されていた。

 

ネタバレ解説

本作の魅力はなんといってもヒロイン?である新城喬子の生き様です。

女優のような美人でありながら両親の借金が原因で家族がバラバラになった過去を持つ女性。

いまだに借金取りにつきまとわれる人生から決別するために「新城喬子」の戸籍を捨てて他人の戸籍を乗っ取って生きていくことを決意します。

最後の最後に新城喬子の居所を突き止めますが胸中が語られる前に本作は終了しますので、何とも言えない余韻が残るところもポイントでしょう。

 

新城喬子の足取り

複雑な過去を持つ新城喬子の行動を時系列で並べてみましょう。

<1983年春>
喬子の父が住宅ローンを返済できなくなり、借金の取立が厳しくなったため一家離散する。
全てはここから始まりました。

<1986年秋>
喬子の母が逃亡生活の苦労から肺炎で死亡。

<1987年6月>
資産家倉田康司と結婚する。

<1987年9月>
借金取りが倉田家の財産を目当てに取立を開始したため倉田康司と離婚する。

<1988年4月>
通販会社ローズラインに戸籍乗っ取り候補の個人情報を入手する目的で就職。

<1988年5月~8月>
交際相手の片瀬の協力を経て戸籍の乗っ取り候補を探すために、顧客の個人情報を入手する。

<1989年11月19日>
木村こずえの戸籍を乗っ取るため、木村こずえの姉を殺害するべく放火事件を起こす。しかし目論みは失敗しこずえの姉は死亡せず植物状態になる。

また喬子も大やけどをし、肺炎になり入院する。

<1989年11月25日>
戸籍乗っ取り候補である関根彰子の母親が事故で死亡する。この事故により関根彰子は身内がいなくなったため、戸籍乗っ取り候補を木村こずえから関根彰子に変更する。

<1989年12月>
関根彰子の戸籍乗っ取り準備を行うため通販会社ローズラインを退職。

<1990年2月18日>
霊園見学ツアーで関根彰子と接触。

<1990年3月下旬>
関根彰子を殺害し戸籍を乗っ取る。

<1990年春>
戸籍を乗っ取った関根彰子の弔いをするために、関根彰子の母校を訪問。

<1990年9月>
関根彰子として和也と交際を開始。

<1991年12月>
関根彰子として和也と婚約。

<1992年1月15日>
関根彰子が過去に自己破産していることが和也にばれて失踪。

<1992年1月15日~>
関根彰子の戸籍を捨て木村こずえの戸籍を乗っ取るべく準備を開始。

 

残された謎

作中では新城喬子の直接の声を聞くシーンはありません。

新城喬子に縁のある周囲の人たちからの話と本間たちの推理の内容のみです。

喬子の行動や目的は本間の推理した内容通りなのだと思いますが一応残された謎もあります。

 

<関根彰子の頭部の遺体は?>
当初は関根彰子の母校に埋めたと考えられましたが実際に母校に行ってみるとそうではないらしいことがわかります。

結局どこに埋めたかは謎のままでした。

 

<当初木村こずえを戸籍乗っ取りの第一候補にした理由は?>
当初は関根彰子ではなく木村こずえの戸籍を乗っ取るつもりでした。

そのためにこずえの姉を殺害すべく放火事件まで起こしています(失敗していますが)。

しかし結局は関根彰子の母親が事故死したことでターゲットを切り替えて関根彰子の戸籍を乗っ取ることにしています。

ここで一つ疑問なのはなぜ当初の第一候補は関根彰子ではなく木村こずえだったのかというもの。

どちらも肉親は一人のみで、職業もフリーアルバイターのこずえと水商売の関根彰子。

ターゲットとして差がないように見えます。

考えられる唯一の違いは年齢で関根彰子は28歳と喬子の年上であるのに対して木村こずえ22歳と年下だということ(喬子は26歳)。

これから新しい人生をやり直すのであれば若いこずえのほうが色々と有利だと考えたのかもしれないですね。

 

あとがき

700Pという長さを全く感じさせない面白さでした。

本作はクレジットカードによる破産に対しての注意喚起もされており。社会的なメッセージ性もある作品だと思います。

しかしそんな話は抜きにしてもミステリーとして抜群に面白かったです。

失踪した一人の女性の足取り追うだけの話がこんなに楽しめるとは思いませんでした。

今後は引き続き宮部さんの本を読んでいきたいと思います。

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