【小説】ソロモンの偽証|ネタバレ感想とタイトルの意味について

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文庫本にして6冊というボリュームながら最後まで飽きることなく一気に読めました。

今回はネタバレ感想とタイトルの意味について考えていきたいと思います。

 

あらすじ

クリスマス未明、一人の中学生が転落死した。柏木卓也、14歳。彼はなぜ死んだのか。殺人か。自殺か。謎の死への疑念が広がる中、“同級生の犯行”を告発する手紙が関係者に届く。さらに、過剰報道によって学校、保護者の混乱は極まり、犯人捜しが公然と始まった―。一つの死をきっかけに膨れ上がる人々の悪意。それに抗し、死の真相を求める生徒達を描く、現代ミステリーの最高峰。

 

ネタバレ感想

以下はネタバレも含めて記載していきますので未読の方はご留意ください。

 

 

 

 

 

 

 

城東第三中学校の屋上から落ちて死亡した柏木卓也。

柏木卓也の死は自殺なのかはたまた他殺なのか。その死の真相を同級生たちが学校内裁判という形で明らかにしていきます。

 

裁判の結果

裁判の内容は札付きの不良少年大出が柏木卓也を殺害したか否かというものです。

結果は卓也の自殺と陪審員は結論付けました。

最終的に三宅樹里の証言か、神原の証言のどちらを信用するのかという2択です。

三宅樹里の方は根拠がないのに対して、神原の方は小林電器店のおじさんが神原が電話ボックスを使用しているシーンを目撃していたこと、弁護士の証言で大出が事件当時自宅にいたことが明らかになったことで神原の証言が正しいと陪審員の生徒たちは判断しました。

神原自身は自殺をしようとしている柏木卓也を自殺に追い込んでしまったと証言していますが、神原の立場からするとこれ以上柏木卓也に構うのは限界だというのは理解できるので、神原に罪はなく柏木卓也の自殺ということで決着しました。

また柏木卓也の遺書も見つかりましたしね。

 

20年後の話

学校内裁判から20年後の話が2つ収録されています。

 

一つは学校内裁判で弁護人の助手を務めた野田健一のお話。

野田健一は教師になり母校である城東第三中学校に帰ってきました。

当時の学校内裁判は20年経った今でも伝説として語り継がれているというのはぐっときますね。

健一は結婚もしていて子供もいるようなので時の流れを感じさせてくれます。

 

 

もう一つは弁護人裁判で検事を務めた藤野涼子のお話。

藤野涼子は弁護士になっており、精華学院中等部で起きたある事件を解き明かすという依頼を受けて活躍しています。

最後は無事事件が解決します。

涼子は学校内裁判で弁護人(と証人)を務めた神原と結婚して子供がいることも明らかになります。

後日談があるなら誰かと誰かがくっつきそうだなと思っていましたが、やはりこの二人が一番しっくりきますね。野田健一と涼子というのも考えられると思いますが。

こういうエピローグは管理人は個人的にすごく好きです。

学校内裁判からこの20年の間にどんなことがあったのだろうと考えられるのがわくわくしますよね。

 

個人的な疑問

ここでは個人的な疑問を挙げていきます。

・松子の死の真相

松子は樹里の告発状について樹里に口止めをされており、その件で動揺してしまい車の前に飛び出してしまい事故死したというのが樹里の証言です。

果たしてこれは本当なのでしょうか。

樹里の証言はコロコロ変わるのでいまいちよくわからないのですが、樹里が逃げる松子を追いかけたために車の前に飛び出してしまったというのも考えられると思います。

事故当時周囲に人はいなかったとのことですが、事故現場にいた可能性もあるのではないかなと考えています。

柏木卓也の自殺と直接関係がない事件なのであまり深掘りされなかったので何となく片付いてしまった印象がありました。

ただこの説を採用すると樹里は結局最後まで嘘をついていたことになるので、そんなことするかなとも一方で思うのでした。

 

・神原の証言

最後の屋上での神原と柏木卓也のやり取りは全て神原の証言が頼りになっています。

偏った見方をすれば実際は神原が柏木卓也を突き落としたとしていてもわからない状況です。

神原の証言が信用に足るという判断を陪審員がしたのは隠しておけば誰も気づかない、自身が不利になる証言を自分でする位だから本当なのだろうということですが、その中に少しの嘘を混ぜるというのは考えられることだと思います。

つまり自身が突き落としたという事実のみは伏せておいて、卓也が飛び降りる現場にいたことのみを明らかにするということです。

これは考えすぎだとは思いますが可能性としては考えられるかなと思うのでした。

 

ソロモンの偽証というタイトルの意味

タイトルの「ソロモンの偽証」の意味は何なのでしょうか。

宮部みゆきさんのインタビューにヒントがあります。

 
最も知恵がある者が嘘をついている・・・・・
 
ソロモン王というのは、神託を受けて人を裁くことを許された人物。それを「偽証」で受けたタイトルですが。
 
宮部 
私の場合、いつもアイデアと一緒にタイトルが出てくる。これが同時に出てこない作品って、大抵ポシャるんです。今回は幸いにも全くブレなかった。敢えて説明してしまうなら、そうですね、最も知恵あるものが嘘をついている。最も権力を持つものが嘘をついている。この場合は学校組織とか、社会がと言ってもいいかもしれません。あるいは、最も正しいことをしようとす
るものが嘘をついている、ということでしょう。
 
新潮社インタビュー

インタビューでは最も知恵のあるもの、最も権力があるもの、あるいは最も正しいことをしようとするものが嘘をついているという意味と明かされています。

最も知恵のあるもの、最も権力があるものについては学校や社会と宮部さんは答えていますが、それでは最も正しいことをしようとしているものは誰なのでしょうか。

今回の学校裁判で言えば全てを知っていて、自分の罪を告白するという正しい行いをする神原が嘘をついていたことを指しているのではと考えます。

つまりソロモンの偽証は「学校」と「神原」の偽証の2つの意味があるのだと思います。

 

あとがき

宮部さんの作品の特徴として犯人はある程度中盤で特定出来るというものがあります。

今回の神原は犯人と言うわけではありませんが柏木卓也の死の真相を知る人物です。

中盤以降明らかに態度がおかしいシーンがあり弁護人助手である野田健一も「何かある」と感じていました。

他のミステリー作品だとこの感覚が裏切られて全く別の人物が犯人というケースがあるのですが、宮部作品の場合は基本的にどんでん返しはありません。

ただ動機や背景は最後まで明かされないためそこを楽しみに最後まで読むことが出来ます。

色々と書きましたが管理人は相当楽しめた作品でした。

文庫本6冊と長いですが未読の方はぜひ読んで欲しいと思う作品なのでした。

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