【小説】蒲生邸事件|詳細ネタバレ感想

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宮部みゆきさんの蒲生邸事件についての記事です。

ネタバレ感想とともに事件のポイントをまとめていきます。

あらすじ

一九九四年二月二十六日未明、予備校受験のために上京した浪人生の孝史は宿泊中のホテルで火事に遭遇する。目の前に現れた時間旅行の能力を持つという男と共に何とか現場から逃れるも、気づくとそこはなぜか雪降りしきる昭和十一年の帝都・東京。ホテルではなく、陸軍大将蒲生憲之の屋敷だった。

 

ネタバレ感想

宮部みゆきさんにしては珍しいタイムスリップもののSF小説です。

1994年から1936年へと58年前にタイムスリップした主人公孝史の奮闘が描かれています。

過去にタイムスリップした先の舞台は蒲生邸。

元陸軍大将蒲生憲之の屋敷です。

そこに時間旅行の能力を持つ平田に連れられてやってきた孝史。

そんな中、主人の蒲生憲之が死亡します。

当初は自決だと思われましたが自決に使用したはずの銃が見つからず殺人事件の疑惑が出てきます。

果たして孝史はこの謎を解くことが出来るのでしょうか。

 

以下はネタバレを含みますので未読の方はご注意下さい。

 

登場人物ごとにネタバレしていきます。

 

・孝史
1994年の現代を生きる浪人生の少年。

予備校の受験のために地方から出てきており、東京のホテルに泊まっていた際に火災に巻き込まれる。

危うく火事で死亡するところを時間旅行の能力者である平田に助けられて1936年にタイムスリップする。

1936年の世界では平田の甥っ子ということにして蒲生邸の人々と関わっていく。

蒲生邸の女中のふきに好意を抱き現代に帰る際に一緒に連れていこうとするが断られる。

その代わり1994年4月20日に雷門の前で再開することを約束する。

 

・平田
時間旅行の能力を持つ。年齢は40代位。

かつては時間旅行の能力を使い過去の大きな事故を防ごうとしていた時期もあったが、結局は歴史の力によって自分が防いだ事故とは別の場所で事故が起きるだけで事故そのものは防げないことがわかり、自分の能力を「まがいものの神」と評し絶望する。

ひょんなことから1994年の世界で同じホテルに宿泊していた孝史を火事から助けて1936年の世界に連れてきた。

最終的に孝史は現代に送り届けたが平田自身は1936年の世界で生き続けた。

最後は徴兵されて硫黄島で戦死した。徴兵された際に時間旅行の能力で逃げることはせずまがいものの神ではなく人間として死亡した。

ちなみに平田は本名ではなく平田が1936年の世界で生きるために買った名前であり、本名は最後まで不明。

 

・ふき
蒲生邸で働く女中。1936年の世界では20歳。

蒲生家に恩義を感じており蒲生邸で働くことに喜びを感じている。

孝史に未来の世界に誘われるが、この時代で生まれた自分が戦争を回避しては逃げたことになると言いその誘いを拒否する。

その代わりに戦争を必ず生き延びて1994年4月20日に孝史に会いに行くことを約束する。

約束通り戦争は生き延びたものの1994年を迎える前に病で他界する。

しかし孝史宛の手紙を書き約束の場所に孫娘を向かわせて孝史にその後のことを報告した。

 

・蒲生憲之
蒲生邸の主人で元陸軍大将。2.26事件で自決した人物。

孝史がタイムスリップする前の現代では蒲生憲之は遺書に日本が戦争に負けることなど様々な予言を記載しており、先見の明があった人物として現代で高く評価されている。

それもそのはずで蒲生憲之はタイムスリップにより未来を見てきていたためこれから起こることを知っていたのだ。

タイムスリップは平田の叔母である黒井の力を借りて行っていた。

最初は戦争が起きないよう周囲に働きかけていたが歴史の力により戦争が不可避であることを悟る。

その後は自らの名誉のために未来のことを記した遺言書を残して息子である貴之に公開させた。

時間旅行の能力により抜け駆けした人物。

 

・蒲生貴之
蒲生憲之の息子。

憲之が自決することと黒井の時間旅行の能力について事前に憲之から聞かされていた。

黒井と協力して屋敷を乗っ取ろうとする蒲生嘉隆と鞠恵を空襲の真っただ中にタイムスリップさせた。

孝史とは最初はそりが合わなかったが孝史が未来から来た人物だと知ると色々と質問したり友好的な関係となる。

戦争を生き抜き戦後は小学校の教師となったが51歳で独身のまま他界する。

 

・蒲生珠子
貴之の妹。

父である憲之の自決について何も聞かされていなかったため相当なショックを受けて生きる希望を失う。

孝史が未来に帰る時も希望を見いだせておらず戦争で死ぬことを望んていたが、孝史が帰った1994年の世界では最大手のタクシー会社の会長夫人になっていた。

1993年に77歳で他界したため残念ながら孝史と再会することはなかったが、多くの孫に囲まれて幸せな人生を歩んでいた様子。

 

・蒲生嘉隆
蒲生憲之の弟。蒲生邸を乗っ取ろうとしているが黒井に強制的にタイムスリップさせられて空襲の真っただ中に連れていかれ死亡する。

 

・鞠恵
嘉隆が蒲生邸を乗っ取るために利用していた女性。しかし本人の性格もかなり図々しいため単純な被害者とは言いづらい。

嘉隆と同じく黒井に空襲の最中にタイムスリップさせられて死亡する。

 

・黒井
平田の叔母で平田と同じく時間旅行の能力の持ち主。

蒲生憲之を尊敬しており憲之に未来の世界を見せたり色々と便宜を図っている。

平田と違い時間旅行の能力に誇りを持っている。

最後は嘉隆と鞠恵をタイムスリップさせた際に力を使い果たし死亡する。

 

歴史の力

本作品の設定ではタイムスリップして過去を変えたとしても結局は歴史の力によってほとんど同じ結末になるようです。

例えば過去に戻って何らかの事故を防いだとしても結局は同じような事故が別のタイミングで起こってしまうのです。

この歴史の力のために平田は自身が持つ時間旅行の能力に無力感を感じていました。

 

蒲生邸事件の真相

蒲生邸事件の真相は結局は憲之の自決です。

しかし事情を知らない珠子が拳銃を持ち去ってしまったため事件性があるように見えてしまったのです。

珠子が拳銃を持ち去った理由は嘉隆と鞠恵を殺害しようとしたためです(黒井に阻止されます)。

 

孝史のタイムスリップで変わったこと

歴史の力がある限り大きな歴史は何一つ変えることが出来ませんが、小さな歴史は変えられます。

その中の一つが蒲生憲之の遺書です。

孝史がタイムスリップする前は憲之の遺書が貴之により戦後に公開されます。

その遺書に未来を予知するような日本が戦争に負けることや軍人批判といった内容が書かれていたため憲之は現代では先見の明があった人物として評価されていました。

しかし孝史がタイムスリップした後の現代では貴之は憲之の遺書を公開しておらず蒲生憲之は現代で特別な評価を受けているわけではありません。

貴之は孝史に戦争を生き抜いた後、自分が臆病者でなくなっていれば遺書は公開しないと語っています。

公開されていないということは孝史が過去に行ったことにより貴之が臆病者でなくなり遺書を公開しなかったということでしょう。

また本来蒲生邸で働く女中のふきも空襲で死亡するはずでしたが孝史の助言により助かりました。

 

蒲生邸は実在するのか

蒲生邸および蒲生家の人々は架空の存在のようですね。

著者のあとがきに書かれています。

本作では蒲生憲之の功績が細かく書かれているので実在の人物かと思いました。

 

あとがき

面白かったです。

100%のハッピーエンドでないところが宮部作品の良いところだと管理人は考えていて今回もまさしくそうでした。

通常であればふきや珠子と孝史が現代で再会する描写がありそうですが、孝史が戻った1994年では蒲生邸に関わる人物は全て他界しており再会は叶いませんでした。

それでもふきの手紙で蒲生邸の人々が力強く生きていたことを知り、孝史同様に自分も頑張らなければと感じられるのでした。

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