【小説】異邦の騎士|御手洗と石岡の出会いの話

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島田荘司氏による御手洗潔シリーズのエピソード0というべき「異邦の騎士」のネタバレ感想記事です。

本作は時系列で言うと御手洗潔シリーズの一番初めになります。

シリーズの二人の主人公、探偵「御手洗潔」と助手「石岡和己」の出会いが詳細に描かれています。

運命的すぎる出会い。

 

あらすじ
失われた過去の記憶が浮かびあがり男は戦慄する。自分は本当に愛する妻子を殺したのか。やっと手にした幸せな生活にしのび寄る新たな魔の手。名探偵御手洗潔の最初の事件を描いた傑作ミステリ『異邦の騎士』に著者が精魂こめて全面加筆修整した改訂完全版。幾多の歳月を越え、いま異邦の扉が再び開かれる。
「BOOK」データベースより

 

 

 

ネタバレ

ここからネタバレしてきますので未読の方はご留意ください。

 

 

 

登場人物

作品の主な登場人物です。

犯人もネタバレしますので未読の方はご留意ください。

 

 

・御手洗潔

記憶を失った石岡が偶然に「御手洗占星教室」を訪ねてきたことで二人は出会う。

御手洗は石岡が犯人に利用されていることを見抜き石岡の犯罪を止める。

この話を読むとなぜ石岡がこんな変わり者の御手洗にずっと付き合っているのかがわかる。

こんな出会い方をしていたら二人の絆はちょっとやそっとじゃ壊れないだろう。

 

・石岡和己

本作の主人公は御手洗ではなく石岡。

全ては石岡が交通事故を起こし、記憶を失ってしまったことから始まる。

石岡が記憶を失っていることに目をつけた益子秀司により代理殺人をさせられそうになるのを良子と御手洗に救われる。

 

・石川良子

一番の被害者。

苗字が違うのでややこしいが良子にとって後述の益子秀司は兄、石川たか子は母、井原源一郎は父、治は弟にあたる。

当初は秀司の計画のもと、秀司、たか子と協力し代理殺人を石岡に行わせようとする。

代理殺人のターゲットは父である井原源一郎。

しかし石岡と一緒に住んでいるうちに、石岡の人柄に惹かれて石岡を本気で愛するようになる。

石岡に代理殺人などさせられないと考えた良子は何とか石岡の代理殺人を止めようとする。

石岡が源一郎をナイフで刺す直前に石岡を止めることに成功するが、もみ合いになっているうちに石岡が持っていたナイフが刺さっていまい救急車で搬送されるがその後絶命する。

死ぬ間際に石岡と病院で再会し、騙していたことを謝罪する。

また石岡宛の手紙を残しており、その手紙には最初は騙す目的だったが石岡を本当に愛していたこと、石岡と一緒に暮らした数ヶ月が本当に幸せだったことが書かれており読者(管理人)を泣かせた。

また死ぬ間際に自らに生命保険をかけていたため、どちらにせよ石岡をだました罪の意識から死を選ぶつもりだったことがわかる。

 

・益子秀司

本作の黒幕というべき存在。

源一郎とたか子が離縁したことで苗字が石川に変わり、その後養子になったことで益子を名乗る。

将来を嘱望される東大の医学生だったが、人身事故を起こしてしまい医者への道を絶たれてしまう。

金銭的に困っていた石川家を救うために、自分たちを見捨てた源一郎を殺害することを考える。

源一郎を殺害すれば自分たちに財産が転がり込むと思ったためだ。

そこに丁度交通事故で記憶を失った石岡が現れる。

秀司は記憶を失った石岡に嘘の記憶を植え付け、源一郎を憎ませて、石岡に源一郎を殺害させる計画を立てる。

その頭脳は素晴らしくあの御手洗も天才と認める程。

秀司の計画に隙がなかったが、良子と御手洗が自らを犠牲になっても構わないという気持ちで石岡を止めたため、結局石岡が源一郎を殺害することはなかった。

良子が亡くなった後、良子が石岡に宛てた手紙を「御手洗占星教室」まで持ってきた。

 

・石川たか子

秀司と良子と治の母。

治が障害があるため多額の金銭を必要としていたため、自分たちをごみのように捨てた源一郎を殺害し財産を奪うことを秀司と計画した。
※源一郎とたか子は正式に離婚はしていなかったため源一郎が死亡すれば財産を相続出来た。

秀司の立てた計画に乗り、石岡に代理殺人をさせようとした。

 

・石川治

源一郎とたか子の子供。秀司と良子にとっては弟。

生まれつき障害を持っており治療費に多額のお金を必要としていた。

 

・井原源一郎

代理殺人のターゲットとなった男。

被害者というよりはこの男がたか子、秀司、良子、治を捨てて若い女との生活に走ったことが全ての原因と言える。

会社の経営者として成功した途端、家族を見捨てて養育費も出し渋るどうしようもない男。

 

事件概要

交通事故を起こした石岡がたか子の勤務する病院に運ばれたところから全てが始まる。

たまたまその場に居合わせた秀司は石岡が記憶喪失なことに目をつけて、偽の記憶を植え付けて自分たちの代わりに源一郎を殺害させる代理殺人計画を思いつく。

そのため石岡を監視する目的で良子と石岡を同棲させる。

そして計画が整った段階で免許証(秀司の免許証だが石岡は事故以来鏡を見れなくなっていたため免許証の写真から自分のものではないとばれる可能性はなかった)を見せて石岡を免許証の住所まで誘導した。
※免許証に記載されているのは秀司の住所。

様々な誘導の結果、たか子と治が住んでいた家を石岡の家だと思わせることに成功し、そこに仕込んであった日記(秀司が石岡の筆跡で書いたもの)を読ませることにも成功する。

そこには石岡自身は記憶喪失前は妻子がいたこと、しかし二人の卑劣な男に妻子を殺されてしまったこと、その恨みを晴らすべく二人の殺害を計画し一人は殺害したこと、そして残りの一人は井原源一郎であることが書かれていた。

日記を読んで驚く石岡。

しかし石岡は自分の筆跡で書かれている日記を信じて妻子の仇を取るべく源一郎殺害に向かうが、良子に止められてしまう。

止められた際は夜であったため石岡は良子だと認識できずもみ合いになっているうちに良子を刺してしまう。

救急車で運ばれる良子。

石岡は良子が搬送された病院を探すべく片っ端から近所の病院に電話をかけるが、どこにも良子は見つからない。

途方にくれる石岡に良子の母を名乗る人物から手紙が届く。
※実際は秀司が書いたもの。

手紙には良子は源一郎の家に連れていかれたと書かれていた。

石岡は良子を救い出すべく再度源一郎への殺意を固めて立ち上がるが今度は御手洗が身体をはって石岡を止める。

そこで御手洗から全ての真相を聞かされた石岡。

計画が失敗したことを認識した秀司は良子が危篤であることを石岡に告げて二人を最後に再会させる。

良子は石岡を騙していたことを謝罪する。

更に良子は石岡宛の手紙を残しておりそこには石岡を愛していたことと、石岡と暮らせて幸せだったことが書かれていた。

Q&A

ここではQ&A方式で事件の謎を解説していきます。

 

Q1

自らの筆跡の日記を読んだからといっても石岡が簡単に源一郎殺害の決意を固めたのはなぜか?

A1

秀司が石岡を追い詰めるために、自らの妻子を殺されたこと、そして石岡自身がすでに一人殺していると日記に書いたため。

石岡は自分が一人殺しているという状況に追い詰められて源一郎殺害の決意を固めた。

まだ誰も殺していないのであれば良子との生活を守るために石岡は源一郎を殺害しようとは思わなかったであろう。

Q2

秀司が石岡の筆跡で手紙を書くことが出来たのはなぜか?

A2

良子が石岡の筆跡を入手するために、自らを突き指と偽って、石岡に良子の代理で手紙を書かせることによって筆跡を入手した。

Q3

記憶喪失になった石岡が未来を予想できるかのように良子の言うことがわかったのはなぜか?

A3

交通事故で病院にいた石岡は無意識のうちに秀司、たか子、良子の代理殺人計画を聞いてしまっていたため、これから起こることが予測できた。

 

Q4

結局石岡は記憶喪失前に結婚していたのか?

A4

していない。日記に書かれていたことは全て秀司が石岡の筆跡で書いた創作。

 

Q5

なぜ石岡は自分のことを益子秀司と勘違いしていたのか?

A5

石岡は良子が隠し持っていた秀司の免許証を見て自分のものだと勘違いした。

顔写真を見ても自分ではないと気づかなかった理由は石岡は事故以来自分の顔を鏡で見ることに恐怖を感じていたため。

鏡を見れない石岡は自分の顔がわからなくなってしまっていた。

秀司は良子からそのことを聞き、石岡に自分の免許証を見せて秀司の自宅まで石岡を誘導することを思いついた。

石岡を自宅に誘導したのは例の日記を見せるため。

日記を見せる上でも本当の石岡の住所に日記を隠して石岡を誘導すると見慣れた景色により本物の記憶が戻ってしまう可能性があるため秀司には望ましくなかった。

石岡が鏡を見れずに秀司の免許証を使用出来て石岡を秀司の自宅に誘導できたのは秀司たちにとっては幸運だった。

 

 

感想

エピソード0というべき本作は二人の主人公「御手洗潔」と「石岡和己」の出会いの物語でした。

他のシリーズを見ていて石岡はよくこんな変わり者の御手洗に文句を言わず付き合ってあげているなと思いましたが、本作を読めば全て納得です。

石岡は秀司が用意した銃を持って源一郎を射殺しようとしますが、御手洗は体をはって銃の前に飛び出しています。

御手洗が止めなければ石岡は犯罪者になっていたでしょう。

文字通り命を懸けて石岡を救ったのですから、ちょっとやそっとでこの二人の関係が壊れることはないでしょう。

推理小説としては予測不可能な部分が多かったのですが、正直そんなことはどうでもいいといえるくらい作品に引き込まれました。

記憶喪失になった男は果たして誰なのか、良子の正体は、等々ページをめくる手が止まりません。

最後に記憶喪失の男が石岡和己とわかるシーンは予想出来ていたとはいえ良かったです。

唯一の要望は全ての原因である源一郎にも罰を下してほしかったところですがそれはまぁ仕方ないでしょう。

推理小説というより極上のサスペンスというべき本作。

タイトルの通り御手洗は記憶喪失の石岡にとってすべてが異邦の地といえる東京で出会った異邦の騎士でした。

未読の方はぜひ読んでみて下さいね。

 

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