【小説】占星術殺人事件|徹底ネタバレ解説

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島田荘司氏のデビュー作「占星術殺人事件」のネタバレ感想記事です。

名作であるとは知りつつもちょっと昔の本なので敬遠していましたが、最近読む本がなくなってきたということもあり読んでみました。

 

あらすじ
密室で殺された画家が遺した手記には、六人の処女の肉体から完璧な女=アゾートを創る計画が書かれていた。その後、彼の六人の娘たちが行方不明となり、一部を切り取られた惨殺遺体となって発見された。事件から四十数年、迷宮入りした猟奇殺人のトリックとは!?名探偵御手洗潔を生んだ衝撃作の完全版登場!
「BOOK」データベースより

 

 

 

ネタバレ

ここからネタバレしてきますので未読の方はご留意ください。

 

 

本作は43年前に起きた3つの事件を探偵の御手洗と助手役の石岡が解き明かすというものです。

 

 

 

登場人物

作品の主な登場人物です。

犯人もネタバレしますので未読の方はご留意ください。

 

・梅沢平吉

事件当時50歳。

屋敷にはほとんど近づかずアトリエで生活している。

梅沢平吉殺害事件の被害者。
多恵と結婚したが時子が産まれた後に離婚する。

その後は昌子と再婚した。
昌子との間に雪子を授かる。

 

・梅沢昌子

事件当時51歳。

平吉の再婚相手であり屋敷に6人の娘と暮らしていた。

犯人に事件のスケープゴートにされて警察に拘留される。
その後獄中死した。

前夫との間に産まれた子供は一枝、知子、秋子の3人。

その後平吉との間に雪子が産まれる。

平吉の前妻の娘の時子にいやがらせをしていた。

 

・多恵

事件当時48歳。
平吉の最初の妻。

平吉との間に時子を授かる。

事件に直接関係はないが、第1の事件が発生した際に実の娘である時子をかばう証言をした。
※ただし時子が犯人と知っていてかばったわけではない。

平吉の死後は財産を一部引き継いだが寂しい老後を送った。

 

・梅沢一枝

事件当時31歳。

一枝殺害事件の被害者。
昌子と前夫との間に産まれた。
長女。

既に離婚しているが、事件当時は他の娘たちと異なり、離婚した旦那から受けついだ家に一人で住んでいた。

 

・梅沢知子

事件当時26歳。
アゾート殺人事件の被害者。

昌子と前夫との間に産まれた。
次女。

平吉の屋敷に暮らしていた。

 

・梅沢秋子

事件当時24歳。

アゾート殺人事件の被害者。

昌子と前夫との間に産まれた。
三女。

平吉の屋敷に暮らしていた。

 

・梅沢雪子

事件当時22歳。

アゾート殺人事件の被害者。

昌子と前夫との間に産まれた。
四女。

平吉の屋敷に暮らしていた。

 

・梅沢時子

事件の犯人。

事件当時22歳。

平吉の屋敷に暮らしていた。

犯行動機は不幸な境遇にある母を助けるため。
そして昌子の実の子どもではないことで屋敷の中で邪魔者扱いされていたことの復讐を果たすため。

梅沢平吉殺害事件では、平吉を殺害した後に積もった雪の上に足跡の偽装工作をし、更に義母である昌子に罪をかぶせるように偽の証拠品を昌子の部屋に忍ばせておいた。
またアゾートに関して綴った手記を平吉のアトリエに残しておきその後のアゾート事件の下準備を行った。

一枝殺害事件では、一枝を殺害した後に、前から目をつけていた竹越刑事に一枝のふりをして近づき、肉体関係を持つことで竹越刑事の精子を入手した。
その精子を殺害した一枝の膣内に入れることで犯人は男であるように偽装工作をした。

アゾート事件では、殺害された一枝の自宅に片付けがあるからと全員を集合させて、ジュースに毒物を混入させて知子、秋子、雪子、礼子、信代の5人を毒殺した。
その後は5つの遺体をバラバラにして組み合わせることで6つの遺体に見せかけて全国各地に埋めた。
なお実際に遺体を全国各地に埋めたのは時子ではなくて竹越刑事。
竹越刑事には犯人とばらされたくなければ言うことを聞けと脅迫し、協力させた。
もちろん実際の竹越刑事は犯人はないが、一枝の遺体に竹越刑事の精子が残っているという状況証拠を考えると言い逃れが出来ないと考えた竹越刑事はしぶしぶ犯人(時子)の指示に従うこととなった。

全ての事件が片付いた後はほとぼりが冷めるまで満州に逃亡。

その後50歳の時に母の多恵に会うために日本に帰ってくる。

平吉の財産を引き継いだであろう多恵が夢であった袋物の店を京都で開いていると考えたため京都に向かうがどこにも多恵の店はなかった。

多恵は事件当時高齢だったこともあって袋物の店をやる気力は既に残っていなかったのだと時子はこの時に初めて悟った。

時子が多恵が昔住んでいた家を訪ねると、多恵は孤独に暮らしておりしかも病に伏せていた。

母を夢を叶えるために起こした3つの大犯罪が何の意味もなかったことを知ると初めて時子は後悔した。

そして自らが死んだはずの時子であることを多恵に明かし、多恵を看取った後は多恵が出来なかった袋物の店をやるべく京都に居を移した。

そこで店をやりながら多恵の意志を継ぐ一方で、一人の男性を待つことにした。

3つの事件を解いた人であれば、真犯人は時子であること、そして母である多恵の意志を継いで京都にいることがわかるため真犯人である時子に会いにきてくれると思ったからだ。

時子は事件を解いた男性には自分が犯人であると弱みを握られることになるので自分の全てをその人に捧げ、その人を愛すると決めていた。

しかし時子の想いはむなしくそのような男性は現れず時子はどんどん年老いていった。

御手洗が全ての謎を解いて時子に会いに来たとき、時子はもう65歳であった。

全ての謎を解き自分に会いに来てくれた男性を一生愛すという目的も潰えたため、生きる意味をなくした時子は警察に捕まる前に自殺したのであった。

 

・梅沢礼子

事件当時22歳。

アゾート殺人事件の被害者。

平吉の弟である吉男の長女。

平吉の屋敷に暮らしていた。

 

・梅沢信代

事件当時20歳

アゾート殺人事件の被害者。

平吉の弟である吉男の次女。

平吉の屋敷に暮らしていた。

 

・竹越刑事

犯人である時子に脅されて、死体の運搬を手伝わされた。

警察を早期退職後は一人事件の犯人を追うための捜査を続けた。

結局時子にたどり着くことはなかったが、犯人に脅されて死体の運搬を手伝ったことと捜査の手記を残しておいた。

その手記が御手洗の目に触れることによって事件解決につながった。

管理人としては竹越刑事と時子が再会していたらどうなっていたのであろうと考えてしまう。

 

 

 

事件概要

本作は3つの事件に分かれています。

事件ごとに概要を語っていきます。

 

・梅沢平吉殺害事件

最初の事件。犯人は平吉の娘の時子。

時子は平吉のアトリエで絵のモデルをやっていた。

絵を描く作業が終わり平吉が睡眠薬を飲んで眠ったところで後頭部を殴打した。

しかしそれだけでは死ななかったため、鼻と口をふさぎ窒息死させた。

外に雪が降っていたため、アトリエにあった平吉の靴を使い、男性の足跡を残して犯人は男性であると偽装工作をした。

アトリエから出た後、カギは窓から糸を使って施錠し密室を作った。

持ち去った靴は翌日平吉の死体を発見する際に返しておいた。

また犯人は昌子であると見せかけるために偽の証拠品を昌子の部屋に忍ばせておいた。

更にアゾート事件の伏線として平吉の名前を使いアゾートに関する手記を部屋に残しておいた。

この手記にはあたかも平吉が狂人であるかのような形で手記を綴っていた。

手記の内容は6人の娘たちの身体の一部を切り取り、切り取った遺体は占星術に従い各地に埋め、切り取ったパーツを使って完璧な一人の娘を作るというものであった。

時子がこの手記を用意したのは後のアゾート殺人でなぜ遺体をバラバラにする必要があったのか、そしてなぜ各地に埋めるのかという回答を警察に用意するためであった。

 

・一枝殺害事件

2番目の事件。犯人は時子。

他の娘とは違い、一人別の家に住む一枝を時子が殺害した。

殺害した後、時子は一枝に成りすましいつも同じ時間に帰宅する竹越刑事を道で待ち伏せする。

そして寂しいからと理由をつけて竹越刑事を一枝の家に強引に引っ張り込み肉体関係を結ぶ。
※この時既に事切れた一枝の死体が隣の部屋にあった。

竹越刑事を帰した後は精子を一枝の膣内に残しておく偽装工作をした。

こうして第一の事件の際に残しておいた男性の足跡と合わせて犯人は男性であると認識させて警察の捜査を混乱させようとした。

また、竹越刑事の弱みを握ることに成功し、第3の事件であるアゾート事件の際に死体を全国各地に埋める作業を行わせた。

竹越刑事はもちろん自分が犯人ではないことを知っているが、一枝の死体に自分の精液が残っている状況証拠は言い逃れが出来ないと考えて時子の指示に従わざるをえなかった。

・アゾート殺人事件

第3の事件。犯人は時子。

一枝の家を片付けるという理由をつけて殺害対象である、知子、秋子、雪子、礼子、信代を集合させる。

そこで時子はみんなに毒入りのジュースを飲ませて全員を一気に殺害する。

そして5人の死体を切断し、6つの死体に見せかける。

死体を6つに見せることで時子自身も死亡したと思わせた。

死体の運搬役は自分ではなく弱みを握っている竹越刑事にやらせた。
※遺体を全国各地に埋めたのは全てを並べると本当の遺体は5つであると気付かれる可能性があったため。

遺体を埋める深さも含めて時子は指示したため、遺体の発見の順番を時子の都合の良いようにコントロールすることが出来た。

 

Q&A

ここではQ&A方式で事件の謎を解説していきます。

 

Q1
結局娘たちの遺体を切り取って完璧な女性の作成に成功したのか?

つまりアゾートの作成に成功したのか?

A1
アゾートを作成するという平吉の手記自体が時子の創作であるため、当然アゾートは存在しない。
時子は自分が死んだように見せかけるために5人の娘のバラバラ死体が必要であった。

そのための理由づけとして平吉の名を借りてアゾートの手記を完成させて警察が発見できるようにアトリエに残しておいた。

平吉が死んでは手記を残した意味がないように思うが誰かがアゾートのことを平吉から聞き、平吉の意志を継いでいると思わせるだけでも意味があった。

 

Q2
時子の犯行動機は何であったのか?

A2
時子は不幸な境遇にある実母多恵に夢である袋物のお店を開いて欲しいと願い事件を起こした。
梅沢家の一家がいなくなれば前妻の多恵にも財産が入り夢だった袋物のお店をやれると思ったからだ。

また根底には時子に嫌がらせをする昌子達への憎しみもあった。

時子は平吉の名前でアゾートの手記を書く際にも多恵に財産を残してやりたいと綴っていた。

結局多恵に財産は入ったが、その時年老いていた多恵は新たに袋物のお店をやる気力もなく孤独な老後を過ごしていた。

唯一の幸運は多恵が死ぬ前に時子と再会できたことであろう。

 

Q3
時子はなぜ一枝殺害事件の濡れ衣を着せる相手に竹越刑事を選んだのか。

A3
竹越刑事がいつも同じ時間に帰っていることを知っていたから。

一枝殺害事件ではトリックの性質上、一枝を先に殺害してからすぐに精子を入手する必要があった。

そのためには毎日決まった時間に一枝の家を通り帰宅する竹越刑事が適任だった。

また後にバラバラ死体を運搬させるにあたっても免許を持っていること、そして警察なので死体運搬時に検問にかかっても言い逃れが出来るであろうという点でも適任であった。

Q4
平吉事件の際、アトリエの外は雪が降り積もっており足跡が残る状況であったにも関わらず時子が計画を延期しなかったのはなぜか?

A4
時子は平吉を殺害する機会を得るために他の梅沢家の人間には内緒で平吉の絵のモデルを引き受けた。
※絵のモデルを引き受ければ平吉とアトリエで二人きりになれるため。
事件の日、平吉が描く時子の絵はまだ顔が描かれていなかったが、明日になれば絵が完成に近づき顔が描かれれば自分が絵のモデルをしていることがばれてしまうため雪の降り積もった日に決行するしかなかった。

※仮に時子が雪の日に決行しなかった場合について考えてみる。
この場合、その後時子の顔が描かれたとしても平吉殺害後に絵を処分すれば問題はないように思える。この点について時子がどう考えたか不明だが極限状態で考えがいたらなかった可能性もある。

 

金田一との関連

この事件のメイントリックに5人の死体を6人に見せかけて、実は一人が生き延びていたというのがあります。

このネタは漫画金田一少年の事件簿に出てくる「異人館村殺人事件」でもろにパクられており、そちらを先に読んでいる人は6人の娘の内の誰かが生きていると容易に想像がつくようになっています。
※占星術殺人事件の方が発行が先ですのでパクったのは金田一少年の方です。

 

管理人は金田一少年の事件簿を見ておきながら結局犯人がわからないまま解答編を読んでしまいました。。

ちょっと考えれば顔のない死体が怪しいとわかるはずなのですが、推理小説を読むときは完全に思考ストップになっていて探偵の鮮やかな種明かし待ちになっているようです。

 

 

感想

金田一を読んでいたためメインのトリックを知っていたのですが、それでも楽しめました。

 

時子が竹越刑事を陥れるために一枝を殺害した後に一枝になりすまし肉体関係を結んだのはおおーなるほどと思いました。

非常に面白かったのですが、気になった点も何点か。。

・御手洗と石岡の口調が似ている。
⇒デビュー作だからなのかもしれないですが、探偵の御手洗と石岡の口調が似ていて二人の掛け合いを読んでいると「あれこれどっちのセリフ?」となることが度々ありました。

・冒頭の平吉の手記がとっつきにくい。
⇒本作の冒頭は時子が平吉の名を借りて書いた手記から始まるのですが、これが星座どうとか、血液型がどうとか書かれていて、ちょっと読む意欲をそがれる部分がありました。
※それ以降はめちゃくちゃ面白いんですけどね。

・アゾート事件について
⇒アゾート事件では一枝の家で時子が全員を毒殺したとなっていますが、これって結構難しいのではと思いました。全員がほとんど同時に飲まないと無理ですよね?
誰かが先走って飲んで苦しんだら誰もジュースに口をつけないでしょうし。
ここの殺害方法は実現可能性としてどうなのかなーという感じです。

・石岡の明治村
⇒京都で調査をするときに石岡が色々と行動していくのですが、どうも明治村に行くあたりが必要だったのかいまいちわかりません。
事件には関係ないですし。
まぁ関係ない部分があっても良いとは思うのですが、推理小説だと全てのパズルがはまるって印象が強いのでどうしてもその部分が浮いてしまった感じでした。

 

何だかんだ書きましたがめちゃくちゃ面白いことは間違いないです。

一つの本に3つの事件がありトリックはどれも秀逸。

読まない手はありません。

 

最後の時子の遺書もぐっときますよね。

古いからと言って敬遠している方はぜひ読んでみて下さい。

 

 

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