島田荘司氏による御手洗潔シリーズの長編「暗闇坂の人喰いの木」のネタバレ感想記事です。
文庫で670ページ程あるので御手洗潔シリーズの中でもかなり長いです。
長いだけあって御手洗&石岡ははるばるスコットランドまで行ったりと冒険しています。
トリックは相変わらず豪快の一言。
あらすじ
さらし首の名所・暗闇坂にそそり立つ樹齢2000年の大楠。この巨木が次々に人間を呑み込んだ? 近寄る人間たちを狂気に駆り立てる大楠の謎とは何か? 信じられぬ怪事件の数々に名探偵・御手洗潔が挑戦する。だが真相に迫る御手洗も恐怖にふるえるほど、事件は凄惨を極めた。本格ミステリーの騎手が全力投球する傑作。
ネタバレ
ここからネタバレしてきますので未読の方はご留意ください。
登場人物
作品の主な登場人物です。
犯人もネタバレしますので未読の方はご留意ください。
・御手洗潔
言わずと知れた名探偵。
・石岡和己
名探偵御手洗潔の助手。
・ジェイムズ・ペイン
日本で外国人の子供たちのための学校を建設し自ら校長を務めた。
妻である藤並八千代との間に卓、譲、レオナの3人の子どもを授かる。
3人が大きくなる前に故郷であるスコットランドに帰ったとされていたが実は八千代に殺害されて、屋敷の秘密の地下室で死体となっていた。
生前の周囲の評判はすこぶるよく、礼儀正しく真面目で教育者の鑑と言われていたが、実は恐ろしい本性を秘めていた。
日本の少女を誘拐して自分の秘密の地下室に作成した芸術作品に加えていくという異常性格者であった。
その行為を妻である八千代に知られてしまい、これ以上被害が拡大することを恐れた八千代に殺害されることとなった。
・藤並八千代
今回の事件の犯人。
夫であるジェームズ・ペインとの間に卓、譲、レオナの3人の子どもを授かる。
英国紳士だと思っていた自分の夫、ペインの恐ろしい本性を偶然知ってしまった八千代はこれ以上被害が出る前にペインを殺さなければならないと決意する。
薬品を使いペインを殺害した後はペインの秘密の地下室に死体を葬った。
その際にペインの私室と秘密の地下室をつなぐ通路をセメントでふさいだが、実は秘密の地下室への通路はペインの私室以外にも大楠の木の中にもつくられており、その存在に気付いた御手洗がペインの死体を発見した。
ペインを殺害したものの自らの子供3人がペインの血を引いていることに恐ろしさを感じた八千代は葛藤を持ちながらも3人の子どもを殺害することを決意する。
最初は卓、そして譲の順番で殺害した。
最後にレオナを殺害するつもりでいたが卓と譲を殺害した際に怪我を負ってしまい絶命した。
なお死に際に「レオナ、男を作るな、子供は産むな」とダイイングメッセージを残そうとしたが、体力が持たず「レオナ、男」でメッセージが切れてしまった。
このせいで一時はレオナが犯人かと思われたが御手洗が全てを解決した。
また3人の子どもを殺害した後は自らも命を絶つつもりであった。
・卓
被害者。
実の母である八千代に異常性格者のペインの血が入っているという理由で殺害された。
実際変わり者の面もあった。
・譲
被害者。
実の母である八千代に異常性格者のペインの血が入っているという理由で殺害された。
殺害された順番は卓、譲の順番。
・レオナ
八千代の最後のターゲットだったが、八千代が譲を殺害した時点で力尽きたため殺されずに済んだ。
自分のことを想って事件の真相を公表しなかった御手洗に感謝をしている。
※レオナは女優であったため自分の母親が犯人で更に父であるペインも生前少女を殺害されたと世間に知られればどんな目にあうかわからなかった。
・三本照夫
八千代の再婚相手。
幼いころ行方不明になった幼い妹が暗闇坂の大楠の枝の上で死体になって発見されるという過去を持つ。
色々と怪しい人物であったが結局は事件に無関係。
・三本美幸
照夫の連れ子。
探偵である御手洗に憧れて色々と協力をした。
事件概要
本作で主な事件は3つあります。
それぞれ簡単に解説していきます。
・過去に大楠の枝の上で発見された少女の死体の事件
この少女は照夫の妹。
誰かに殺害されたわけではなく八千代が面倒を見ていた野良犬にかみ殺されてしまった。
気が動転した八千代は死体を隠そうと画策する。
そして毎日大楠の下で商売をしている八百屋のトラックの荷台に死体を乗せることを思いつく。
トラックの荷台に乗せれば八百屋がそのまま別の土地まで死体を運んでくれると考えたため。
紐で少女の死体を結び八百屋のトラックの上にある大楠の枝に紐をかけてトラックの荷台にこっそり乗せようとするが、紐がひっかかってしまい死体は大楠の上に放置されたままとなってしまった。
その状態で死体を発見されたため大楠が人を殺すという不気味な伝説が始まった。
・大楠の幹の中で発見された4つの少女の死体
ジェームズ・ペインの犯行。
ペインは学校の校長をしながら秘密の地下室で数々の芸術活動をこなしていた。
その中には殺害した少女の遺体を使用した人形も含まれていた。
ペインは自らが殺害した少女の遺体を地下室と通じている大楠の幹の中に隠していたのであった。
最後はペイン自らも妻である八千代に薬殺され秘密の地下室に葬られた。
・卓、譲殺害事件
実の母である八千代の犯行。
異常性格者であるペインの血を引いている子供たちが将来恐ろしい犯罪を犯すことを恐れて、殺害した。
八千代は最後にレオナも殺害しようとしたが卓、譲の二人を殺害する犯行の中で、重傷を負ってしまい命を落としてしまったためレオナは助かることとなった。
Q&A
ここではQ&A方式で事件の謎を解説していきます。
Q1
結局犯人は誰だったのか?
A1
事件ごとの犯人。
大楠の上で少女の死体が発見された事件
⇒野良犬が少女をかみ殺して、その野良犬の面倒を見ていた八千代が死体を隠ぺいしようとした。八百屋のトラックの荷台に隠そうとした八千代だったが計画を遂行できずに誤って大楠の枝の上に放置されてしまった。つまり犯人は犬。
過去に4人の少女が殺害された事件
⇒ペインの犯行。自らの芸術作品のために少女を殺害した。
卓・譲の殺害事件
⇒実の母である八千代が犯人。ペインの血が引き継がれている子供たちが将来恐ろしい犯罪を犯すことを恐れて殺害した。
Q2
ペインの秘密の地下室とはなんだったのか?
A2
ペインが自らの芸術活動をこっそり行うために作った秘密の地下室。
ペインの私室と大楠の幹の中から地下室に行けたが、ペインの私室との通路は八千代がペインを殺害した際に八千代によりセメントで封じられた。
なおペインはこの地下室で少女の死体を使った人形を作成していた。
Q3
結局大楠は人間を飲み込んだのか?
A3
大楠は死体の隠し場所に利用されただけ。
感想
文庫にして670ページはある長編です。
途中ちょっと中だるみした感はありましたが、最後の謎解きは文句なしにハラハラして楽しめました。
八千代が犯人とは正直予想してませんでした。
だって最終的に死亡しているし、被害者の実の親だし。。
トリックはちょっと大味な感じがしましたがこれが御手洗シリーズ。
総じて満足できる作品でした。
未読の方はぜひ読んでみて下さいね。
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