【百田尚樹】野良犬の値段|読了後の感想(ネタバレ含む)

小説

百田尚樹さんの最新作「野良犬の値段」を読了したので感想をまとめたいと思います。

感想

管理人としては百田尚樹さんの作品の中でトップクラスに楽しめました。

478Pの長編でしたがページをめくる手が止まりませんでした。

あらすじ

突如としてネット上に現れた、謎の「誘拐サイト」。
<私たちが誘拐したのは以下の人物です>
という文言とともにサイトで公開されたのは、
6人のみすぼらしい男たちの名前と顔写真だった。
果たしてこれは事件なのかイタズラなのか。
そして写真の男たちは何者なのか。
半信半疑の警察、メディア、ネット住民たちを尻目に、
誘拐サイトは“驚くべき相手”に身代金を要求する――。
日本全体を巻き込む、かつてない「劇場型犯罪」が幕を開ける!

幻冬舎 公式サイト

 

 

ここからはネタバレを含みますので未読の方はご留意ください。

 

百田さんの小説は読後感が良いのが特徴ですが、この「野良犬の値段」も程よい読後感を味わうことが出来ます。

 

それではネタバレ含む感想を書いていきます。

 

この事件はホームレス達が自らを誘拐されたことにしてテレビ局や新聞社に身代金を要求するという狂言誘拐事件です。

ホームレス達は何の意味もなくテレビ局や新聞社をターゲットにしたわけではなく、かつてテレビ局や新聞社の誤った報道により社会的地位を失い、ホームレスに転落したためその復讐をかねてのことでした。

結論として狂言誘拐事件を起こした犯人のホームレス達は周到な準備のもと警察を出し抜きテレビ局と新聞社からまんまと身代金を手に入れます。
※その身代金は自分達のために使わずにホームレスの支援団体に全て寄付するというオチは百田さんらしくてベタですが好きです。

本来テレビ局や新聞社は無関係のホームレス達の身代金を払う理由はありませんが、企業のイメージダウンを考えて犯人のホームレス達との取引に応じたのです。

さて管理人が本作品で一番面白いと思った点は、当初からホームレス達の狂言ではないかと疑われながら、警察がその証拠をつかむことが出来なかった点です。

 

事件の概要もふまえて説明します。

狂言誘拐のメンバーはホームレスである高井戸、影山、大友、石垣、松下の5人です。

狂言誘拐の話を発案者の高井戸から聞いた影山、大友、石垣、松下の4人はその計画に乗ることにします。

しかもただ計画に乗るだけでなく松下は残り少ない命である自分の身体を計画に役立ててくれとまで言います。

警察たちに狂言誘拐だと疑われないようにするための一番の方法は実際に人質が死亡することだからです。

松下は余命いくばくかの命であったため、本当の誘拐だと見せかけるために自分の死体を使ってくれとみんなに言ったのでした。

高井戸達はその申し出を拒否しようとしますが松下の強い要望により実行されることになります。

しかし単に松下が死亡しただけでは警察に狂言誘拐と見破られていた可能性があります。

なぜなら最終的に松下の死体が出てくれば検死などで松下の身体が余命いくばくかであることがわかってしまうからです。

これでは松下が余命いくばくかであることを利用して狂言誘拐を計画したと疑われる可能性が出てきます。

しかし死体が松下だけでなくもう一人いたらどうでしょう。

警察はさすがに狂言だとは疑うことが出来なくなります。

そのもう一人の犠牲者が原口でした。

この男は過去に残虐な性犯罪を繰り返していて現在は高井戸たちと同様にホームレスでした。

そして偶然から松下は過去に自分の娘を殺害したのがこの原口であることを知ってしまいます。

このことで高井戸や松下は復讐の一環として狂言誘拐に真実味を出すために原口を二人目の人質の犠牲者として殺害することを決定します。

原口を人質として殺害したことで警察は狂言誘拐と断定することが出来なくなります。

なぜなら松下が後に余命いくばくかであることがわかっても、原口はそうではなく健康だったからです。

犯人たちの狂言であったとしたらその仲間と思われている原口が死ぬ道理はないのです。

ここから更に警察が推理を進めて原口がかつて松下の娘を殺害した男だと考えたとします。

原口は復讐もかねて人質として処刑されたのだと推理しても、その推理には無理があることがわかります。

なぜなら警察ですら松下の娘を殺害した犯人が原口であることを突き止められなかったのに、それから何十年も経っているにも関わらずホームレスである松下たちがそのことを突き止められる理由が説明できないからです。

だから警察は誘拐されたホームレスの中に松下や原口がいたのは偶然と考える他ありません。

実際松下が原口を自分の娘を殺害した犯人と突き止めたのは本当に偶然に過ぎませんが、この偶然が犯人のホームレスたちに味方して計画が成功することになるのでした。

いままでツキに見放されていたホームレスたちがこの偶然を手にしたことで大きな狂言誘拐をやり遂げるのは痛快な話でした。

 

しかし本書を読んでいて思ったのはこのご時世、誰もがいつホームレスになってもおかしくないということです。

ホームレスになる前は普通に会社員であったとしてもちょっと運に見放されて歯車が狂ったらあれよあれよという間にホームレスになってもおかしくありません。

狂言誘拐のトリックだけでなく日本のホームレス問題についても考えさせられる一冊でした。

 

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