クリスマス・イヴの日の心が温かくなるお話が5編収録されています。内容はベタです。しかしベタだからこそいいんです!
ちょっと最近元気がない方におススメしたい1冊。
あらすじ
幸せな空気溢れるクリスマスイブ。恵子は、7年間働いた会社からリストラされた。さらに倒産の危機に瀕する弟になけなしの貯金まで渡してしまう。「高望みなんてしない。平凡な幸せが欲しいだけなのに」。それでも困っている人を放っておけない恵子は、一人の男性を助けようとするが―。5編の泣ける奇蹟。
ネタバレ
5編のクリスマス・イブの心温まる話。ネタバレなので未読の方は注意。
第一話 魔法の万年筆
クリスマス・イブに恋人もおらず更には会社をリストラされて踏んだり蹴ったりの恵子。自分が困っているにも関わらず他人が困っているとどうしても助けてしまう性格。
リストラされた帰り道にホームレスのおじさんを助けると、そのおじさんからお礼に願いが3つ叶う魔法の万年筆を貰う。
魔法の万年筆の効果を当然疑う恵子。試しにケーキが食べたいと願うと見事それが叶う。そして二つ目は半信半疑で弟の会社が立ち直れるようにと願うとそれも現実に。
魔法の万年筆を効果を完全に信じた恵子は最後の願いを何にするか考える。素敵なパートナーに出会いたい等、自分が幸せになるための願いを考えるが、悩んだ挙句同じアパートに住んでいる俳優を目指す青年健作がスターになれますように、と願った。
そして間もなく健作が会いに来てテレビドラマの準主役に抜擢されたと告げられる。健作の嬉しそうな顔を見て最後の願いを健作のことにして良かったと思う恵子。
そして同時に健作は恵子にプロポーズをして二人は結ばれるのであった。
自分の幸せより他人の幸せを願って恵子が、最後の最後に幸せになる話。ベタだけど好きです。
第二話 猫
今日が派遣期間最終日の派遣社員の雅子。クリスマス・イブに密かに思いを寄せる派遣先の社長石丸の仕事を手伝う。
仕事も無事に終わり石丸から食事に誘われるが、飼い猫のみーちゃんが帰りを待っていることを思いだす。みーちゃんは片目が潰れた捨て猫でかつて雅子が拾ったのだった。
石丸にそのことを話すも、少しだけと結局食事に行くことに。
石丸に送られて家に帰った雅子。玄関まで着いてきた石丸は猫を見て「ミーシャ!」と叫ぶ。なんとみーちゃんは昔石丸が大切に育てていた猫ミーシャだったのだ。
石丸はミーシャが幸せに暮らしていることを知って喜ぶ。
実は石丸も雅子に好意を寄せており、猫のミーシャが見守る中雅子に交際を申し込むのだった。
片目が見えない猫が二人を結ぶ話。
第三話 ケーキ
末期がん患者の真理子は密かに医者の大原に思いを寄せていた。死期が近づいた時、夢の中でがんが奇跡的に治り幸せな生活を営む夢を見る。
結局真理子は息を引き取るがその顔を微笑んでいるようだった。
第四話 タクシー
30歳になる依子はクリスマス・イブの夜に酔っぱらって一人でタクシーに乗り込む。そこでタクシー運転手に昔本当に好きになった男島尾のことを語る。
旅行先で出会ったこと、自分は工場で働いているのにスチュワーデスと偽っていたこと、東京に戻ったら会わないと決めていたのに何度もデートをしてしまったこと等。
真実を告げられないままクリスマス・イブに島尾とデートに行くことになっていた依子。島尾はテレビ局に勤めており、自分とは住む世界と違うと悩んでいた。
このまま嘘はつけないと意を決して手紙で真実を打ち明けて、それでも自分を好きでいてくれるならクリスマス・イブの正午に初めて会ったホテルに来て欲しいと告げる。
クリスマス・イブの日を待つある日、島尾から留守番電話が入っており、イブの日はいけなくなったとメッセージが残されていた。
島尾との関係は終わったと悟った依子は携帯を解約し、島尾との連絡手段を消去した。しかし連絡手段を消去しても心の中から消すことは出来なったとタクシーの運転手に語った。
そこで今までずっと黙って話を聞いていたタクシーの運転手が初めて口を開いた。「その人はテレビ局員というのは嘘かもしれないですね。あなたがスッチーと嘘をついたように、その二人の男も嘘をついたのかもしれませんよ」。
その声は紛れもなく島尾のものだった。島尾はクリスマス・イブに会えなくなったのは両親が危篤で故郷に帰っていたためであること、東京に戻ってきて依子の手紙を読んであわてて電話をしたが連絡が取れなくなっていたこと、その後依子を探したが出会えなかったこと、自分はテレビ局員ではなく本当はトラックの運転手だったことを語る。
島尾は依子ともう一度会うためにトラックの運転手を辞めて、乗客として依子を乗せる日を待つためタクシー運転手に転職していたのだった。
5年間だけタクシー運転手を続けて会えなかったら故郷に帰ることを決めていた島尾。依子と出会ったクリスマス・イブの今日がちょうど5年目の最後の夜だった。
すれ違いから最後に結ばれる恋愛ドラマのお手本のようなお話。でもこういう話はわかっていても感動する。
第五話 サンタクロース
優しい旦那と4人の子供に囲まれて幸せな家庭を営む和子。しかし過去にとても辛い時期がありその苦難を乗り越えて今がある。両親を失い、最愛の婚約者を失い、お腹の子供と二人だけになってしまったのだ。
クリスマス・イブの夜その時の辛い経験を初めて今の夫賢治に語るのだった。
婚約者に先立たれ、生きる気力を失った和子はクリスマス・イブの夜死に場所を求めていた。彷徨い歩いた和子は不思議な教会にたどり着く。そこには不思議な牧師さんがいた。
その牧師さんに話を聞いてもらうことで和子は生きる気力を取り戻した。牧師さんは手の甲に星型の不思議なやけどの跡があった。
その後お腹の子供、望を生んだ和子は、今の夫賢治と出会い結婚する。高校生になり少しぐれてしまった望。実の子ではないが賢治は俺はあの子のことが好きだと言う。
そんな話を夫婦でしているとリビングから末っ子の聖子の声がした。駆けつけるとそこには倒れてくるストーブから聖子を庇ってやけどした望がいた。
水で冷やすとその手の甲のやけどの跡は素敵な星の形をしていた。
和子を救ってくれた牧師さんは息子である望の将来の姿であったというお話。
感想
各話とも読み始めた時に、ラストがある程度予想できます。しかし予想出来ていてもじーんと感動できる話ばかりです。
百田さんの作品は読んだ後に頑張ろうという気になるのが好きです。折角読むなら読後はいい気持ちになりたいですからね。
どの話も50ページ弱なので通勤・通学で気軽に読めます。
最近元気がないという方にお勧めです。
個人的に一番好きなのは時を越えて自分の母親を救う、最後の「サンタクロース」です。
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