先日の影法師に続きモンスターを読了しました。本作はブサイクで悲惨な人生を歩んできた主人公が名前も顔も変えて初恋の男を追い求める話です。
あらすじ
田舎町で瀟洒なレストランを経営する絶世の美女・未帆。彼女の顔はかつて畸形的なまでに醜かった。周囲からバケモノ扱いされる悲惨な日々。思い悩んだ末にある事件を起こし、町を追われた未帆は、整形手術に目覚め、莫大な金額をかけ完璧な美人に変身を遂げる。そのとき亡霊のように甦ってきたのは、ひとりの男への、狂おしいまでの情念だった―。
ネタバレ
未帆(元の名前は和子)が故郷の田舎町でレストランを経営するのは初恋の人「英介」が店に訪れるのを待つため。ブサイクなことで幼少の頃から凄まじい屈辱を受けてきた未帆。ふとしたことから整形に目覚めて美しくなることを目指す。何千万円もの資金を普通の仕事で貯めるのは無理なので風俗の仕事を始めようとするも、容姿のせいで面接すら拒否されるありさま。
ようやく入店した店で稼いだお金を全て整形につぎこみどんどん美しくなる未帆。そうするとわかるのは周りの男たちの反応が明らかに変わったこと。自分に対して恐縮した態度を取るようになったのだ。これに快感を覚えた未帆はどんどん整形にのめり込み数千万円をかけて究極の美を手にする。
順風満帆だった未帆だが、ハードな仕事に肝臓が弱ってしまっており入院してしまう。ほとんどの男が未帆から去っていったが、その中で唯一ずっとそばにいてくれた大橋という素朴な男と結婚する。
おだやかな生活を手に入れたように見えた未帆だが、だんだんと大橋が未帆の美しさに慣れたこともあり、当初のように大事にされなくなってくる。そんな中大橋の浮気が発覚し離婚する。
離婚した未帆の心に蘇ってきたのが初恋の男英介だった。英介が田舎に帰っていることを知った未帆は英介に会うため田舎でレストランを始める。そしてとうとう待ちわびた英介が店に訪れた。未帆は狙いどおり美しさを生かして英介を虜にする。
英介は妻子持ちだが離婚して未帆と結婚したいと言う。未帆も了承するがなかなか実際には離婚しない英介。そんな中二人は口論になり、未帆はその最中にくも膜下出血でなくなってしまうのであった。
感想
本作はとてつもなくブサイクだった未帆が努力で美しさを手に入れて、女としての頂点に上り詰めていく出世物語のお話。未帆がちょっとずつお金を貯めて徐々に綺麗になっていくシーンは非常に見応えがあった。周りの反応の変化も面白い。
未帆はブサイクだった和子としての過去を消したがっていたが、初恋の男英介にだけは美しくなった未帆としてではなくブサイクだった和子として愛されることを望んでいた。美しさが全てと理解した未帆にとっても自分の特別な人には、たとえ自分がブサイクでも愛してほしいという純粋な思いがあったのだろう。
そう考えると本作の未帆は非常に純粋なキャラである。ただただ女として美しくなりたい、でも好きな人には中身で好きになってほしい。そんな未帆に共感できる人も多いはずだ。
エピローグについて
第一発見者の店の女の子の話で、英介はくも膜下出血で倒れた未帆をほうって逃げたことが明らかになる。自分からさんざん結婚したいと言っていた未帆をほうって逃げたのだから英介が最低の人間であることは間違いない。
英介が逃げた理由は、未帆が本当はブサイクな和子だった、面倒なことに巻き込まれたくなかったということだと思うが散々結婚したいといっておいてこの行動はちょっとありえない。
ただ未帆(和子)にしてみれば死ぬ前に「和子でも好きでいてくれる?」の問いに英介が「ああ、ああ」と言ってもらえたので安らかな気持ちで逝けたのが唯一の救いである。それが本当は偽りだとしても。
しかし何千万円もかけて究極の美を手に入れて追い求めた初恋の男がこの程度の男と言うのはなんとも悲しい話だ。
未帆の整形や風俗での仕事など全てを知っている崎村のプロポーズを受けていたら、未帆は死なずに幸せな人生を歩んでいただろうと思うと何とも痛まれない気持ちになる。
まぁそんあこんな含めて悲しい部分もあるけど総じて楽しめた本作モンスターでした。
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