東野圭吾さんの最新作「白鳥とコウモリ」を読了したので疑問点と感想をまとめたいと思います。
疑問点と感想
まず率直な感想としてはとても楽しめました。
久しぶりに先が気になってページをめくる手が止まらない作品に出合いましたね。
522Pの長編でしたがわずか二日で読了したほどです。
あらすじ
二〇一七年十一月一日。
港区海岸に止められた車の中で腹を刺された男性の遺体が発見された。
被害者は白石健介。正義感が強くて評判のいい弁護士だった。
捜査の一環で、白石の生前、弁護士事務所に電話をかけてきた男、
倉木達郎を愛知県三河安城に訪ねる刑事、五代。
驚くべきことにその倉木がある日突然、自供をし始める――が。
二〇一七年東京、一九八四年愛知を繋ぐ〝告白〟が、
人々を新たな迷宮へと誘う—。幻冬舎 公式サイト
ここからはネタバレを含みますので未読の方はご留意ください。
疑問点
大変楽しめる作品であることは間違いないのですが読んでいて疑問に思う点もありました。
それは本作の軸にもなっている和真と美令の恋愛模様です。
加害者の息子である和真と被害者の娘である美令。
この二人の関係は本来であれば決して相容れないものとして作中で白鳥とコウモリの関係と言われています。
つまりこの二人の関係がタイトルにもなっているわけです。
相容れないはずの和真と美令ですが物語が進むとお互いに惹かれあっていきます。
加害者の息子である和真は
父倉木達郎が自白している内容は本当なのか本当に父は殺人を犯したのかに疑問を持ちます。
一方で加害者の娘である美令は
殺害された父白石健介が本当に達郎の供述どおり達郎に過去の罪を自白するように迫ったのかに疑問を持ちます。
※美令からすると健介が一方的に正義を振りかざすのは父らしくないと疑問に思ったわけです。
二人とも倉木達郎の供述に疑問を持ち警察、検察、弁護士に相談しますが、受け入れてもらえないので自ら事件の内容を調査していきます。
もともと別々に調査を行っていた和真と美令は偶然会ったことをきっかけに事件に関する情報交換を行うようになり、さらには一緒に調査を行います。
立場は違えど真実を求めるという目的は一致していたからです。
その中で二人は相手のことが気になりだし・・・という流れなのですが、正直ここがどうも不思議なのです。
自分(和真)の父が殺人犯、自分(美令)の父が殺害されたという状況の中、すぐに恋愛しようという気分になるものでしょうか。
それとも逆にそんな状況でもお互いを好きになってしまうくらいの激しい一目惚れということなのでしょうか。
和真と美令がお互いを好きになる過程がわからず、いつの間にそんなに好きになっていたのという点がとても気になるのでした。
ストーリーとしては二人が掴んだ新事実のおかげで、倉木達郎の自白では
1984年の灰谷殺人事件の犯人 :倉木達郎
2017年の白石健介殺人事件の犯人 :倉木達郎
だったのが
1984年の灰谷殺人事件の犯人 :白石健介
2017年の白石健介殺人事件の犯人 :安西知希
であることがわかります。
倉木達郎はどちらの事件の犯人でもなかったのです。
倉木達郎は殺害された白石健介とともに安西知希とその家族をかばっていただけなのでした。
※かばう理由についてはぜひ本を読んでみてください。
この結果、美令は殺人事件の被害者の遺族であっただけなのが、加害者の家族にもなってしまったわけです。
美令の取り巻く状況は一変し、加害者の家族ということで様々な嫌がらせを受けるようになります。
美令は倉木達郎が自白してくれたまま事件を決着させた方が良かったのかと考えますが、それでも自分が調査したことで加害者の家族という立場から和真が救われたのだからと考えて前を向いて生きています。
ラストはそんな美令に和真が会いにきて今後の二人が恋仲になることを予感させる展開で終わります。
ラストの終わり方が非常に好きなだけにもう少し和真と美玲が惹かれていく過程が描かれていると良かったなと思う管理人でした。
感想
和真と美令の惹かれ合う過程には疑問があるものの、総じて満足できました。
個人的に倉木達郎の献身性は東野圭吾さんの別作品である「容疑者Xの献身」の石神に似ているなと思いました。
どちらも他人が他の人を庇うためにこんなことをするわけがないと点で共通している気がします。
※その結果警察の捜査の目をくらませる点も同じ
達郎が嘘の供述をしなければ決して出会うはずがなかった和真と美令が今後どうなっていくのかも気になるところですね。
1984年の事件で倉木達郎が白石健介をかばったことは誤った選択だったかもしれませんが、その結果和真と美令が出会うことも出来たのも事実です。
個人的には刑事の五代が言っていたように1984年の事件が原因で辛い事件が引き起こされてしまったのでせめてこの二人には幸せになってほしいものです。
未読の方はぜひ読んでみてください。
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